翌日――
「”白銀の大牙”の入手には人手が必要、か……」
俺は町をぶらつきつつ、そう呟く。
昨日、冒険者ギルドの受付嬢から情報を集めておいた。
シルバータイガーはBランクの魔物であり、かなり強いとされている。
だが、S級スキル竜化を持つ俺であれば、討伐自体は容易い。
俺とリリアをメインとしつつ、キーネたち5人を適当に使ってやれば、簡単に”白銀の大牙”が手に入る。
そう思っていたのだが――
「エリクサーの作成のためには、質のいい”白銀の大牙”が必要なんだよなぁ……」
こちらはリリアからの情報だ。
様々な回復薬の材料に使える”白銀の大牙”だが、エリクサーを作るためには特に質の高いものが求められるらしい。
俺やリリアが高威力のブレスで焼き払ってしまえば、牙も焼失してしまう。
だからといって、肉弾戦を挑んで全力のパンチでも喰らわせてしまっては、せっかくの貴重な素材を台無しにしてしまいかねない。
ゆえに、”白銀の大牙”の質を保ったまま手に入れるためには、それなりの実力を持つメンバーが複数必要だというわけだ。
「キーネたちも悪くはないが……」
キーネたち5人には、竜の加護を付与済みだ。
奴隷契約も結んでいるので、俺の指示には従ってくれる。
だが、俺とリリアを含めて7人ではまだ不安が残る。
シルバータイガーは希少な魔物なので、『失敗したから次』ということができないのだ。
もう少しメンバーがほしい。
だが、俺はブリケード王国の生まれであり、この町で過ごした月日はさほどでもない。
この町に知り合いはあまりいないのが現状だ。
(どうしたものかな……)
そんなことを考えながら歩いていると、後ろから声をかけられた。
「あのっ! ライル様ではありませんか?」
「ん? ああ、その通りだが」
俺は振り返り、そう答える。
少女がそこに立っていた。
ストレアで俺の名前を知っている者は、少しずつ増えてはいる。
銀月草の採取、ゴブリンキングの討伐、そして盗賊団の殲滅などで、俺の顔は売れつつあるからだ。
こんなふうに、見知らぬ相手に話しかけられることもある。
「お久しぶりですっ! ご活躍はかねがね聞いております。あの、少しだけお時間よろしいでしょうか?」
……どうやら知り合いだったようだ。
そう言われてみれば、どこかで見覚えがあるような気もする。
「少しだけなら構わんが」
「やった! では、こちらへどうぞ!!」
少女が無邪気に喜んでいる。
だが、悪いな。
俺は君の名前すら思い出せんのだ。
ふうむ。
いったいどこで知り合ったのだったか――
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