キーネの元仲間だという冒険者たちがなかなか諦めない。
心優しい俺は、奴らに救いの手を差し伸べることにした。
「俺と取り引きしろ。条件は簡単だ」
「「「…………」」」
彼らは警戒しているようで返事をしない。
まぁ、それもそうか。
先ほどまで戦っていた男がこんな申し出をしてきた時点で、怪しさ満点だ。
「この首輪が何か分かるか?」
「そ、それは……! 奴隷の首輪!?」
「国に認められた奴隷商しか持っていないはず……」
「なんで、あなたなんかが持っているのよ!」
3人が動揺している。
奴隷の首輪は、希少なアイテムだ。
市中に出回ることはほとんどない。
その理由は、主に3つ。
1つは、作製難易度の高さだ。
スキルの補正無しで奴隷の首輪を作るには、かなりの魔力量と練度がいる。
補正無しなら、実質的に作製不可と言っても過言ではない。
B級スキルの『魔道具作製』あたりの補助が前提になってくる。
次に、素材の問題。
レアなモンスターから取れる魔物の素材を使用するため、非常に高価である。
そんじょそこらの魔道技師や商人では、用意できない。
そして最後に、作製手順が秘匿されていることである。
奴隷の首輪は、非常に有用性の高い危険なアイテムだ。
作製難易度の高さと素材の高価さは問題だが、逆に言えばそれらをクリアすれば誰にでも作れる可能性がある。
大手の魔道技師や商人が大量生産を試みたりしないように、その作製手順は秘匿されているのだ。
それを知る者は、各国の中でもかなり限られていることだろう。
「俺がこれを持っている理由なんざ、どうでもいいだろう? 現に、ここにあるのだからな」
S級スキルを持ち、ブリケード王国の元第一王子である俺ならば、その3つの問題全てをクリアすることができる。
だが、わざわざそんなことを説明してやる義理もない。
「ぐっ……」
男が怯む。
さぁ、ここからが提案の本題だな。
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