S級スキル【竜化】持ちの俺、トカゲと間違われて実家を追放されるが、覚醒し竜王に見初められる。今さら戻れと言われてももう遅い。お前たちは、俺たちの属国として面倒を見てやるよ

猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

111話 無力な存在というのは愛おしいものよ

公開日時: 2022年9月30日(金) 10:18
文字数:1,033

「ほう! ライルはそやつとの間に子をなしたのか?」


 村の女たちやサテラと楽しんだ翌日、俺はサテラやサティと共に村を出発した。

 そして無事にストレアに戻り、リリアに状況を報告した。


「ああ。俺も予想外だったが……。こうして見ると、可愛いものだな」


 最初に見たときに殺そうかどうか少し悩んだのは内緒だ。


「それでその子は何と言うのだ?」


「サティだよ。サテラとライルの娘だからな」


「ほう。いい名前ではないか」


「ありがとうよ」


 俺はサティに目を向ける。


「あうー」


「ほらほら、いい子いい子」


 サテラがサティをあやしている。

 今はまだ小さいが、これからもっと大きくなるだろう。

 そう考えると、ちょっと楽しみになってきた。


「ちなみになんだが、リリアはこういうことを気にしないのか?」


「む? ライルが小娘と遊んだところで、余は関知せぬぞ。いずれは余との間にも子をなしてほしいものだがな。今はまだその時でない」


 リリアは竜王だ。

 そして俺はS級スキル竜化を持つ。

 俺たちの子どもは、きっととんでもない才覚を持つ子になるのではないだろうか。


「そんなことより、ライルよ。こやつが増えたことで、シルバータイガーの捕獲作戦は成功率を増したかもしれん。だが、まだ足りんであろう?」


「そうだな。あと何人かは人手を確保するつもりだ」


「それならば、冒険者ギルドに顔を出してやるがよい。例のあの……ええと……」


「うん?」


「あーっと、そう、アイシャじゃ。アイシャがライルを探しているはずだ」


「アイシャ? ああ、ギルド職員のあいつか」


 ギルマスの娘だな。

 俺の盗賊討伐の旅にも同行させたことがある。

 あいつにも”竜の加護”は与えているし、俺に従順だ。

 俺が頼めば――いや、俺が命令すれば喜んで力を貸すだろう。


「よし、わかった。明日、冒険者ギルドに顔を出すことにする」


「うむうむ。それが良いぞ」


「リリアはどうするんだ?」


「余はこやつ――サティの相手をしてやる。サテラと共にな」


 リリアはサティを抱くと、その頬に口づけをした。

 結構可愛がっているなぁ。

 サティの才覚はぼちぼち程度だろう。

 父親はS級スキル竜化持ちの俺だが、母親はただの村娘だからな。

 竜王リリアからすれば、サティなど格下でどうでもいい赤子だと思っていたのだが。


「リリア様、サティを可愛がってくださりありがとうございます」


「うむうむ。無力な存在というのは愛おしいものよ」


 ああ、なるほど。

 リリアがサティに向ける感情は、一般的な人族が子犬や子猫に向けるあれに近いんだな。

 俺はそう理解したのだった。

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