「聞いていなかったのか? 俺は違法奴隷商人の一派を壊滅させた。彼女――レスティはその戦利品さ。ついでに、彼女の母親も確保している。そちらは、体力の消耗が激しかったため上で寝かせているがな」
俺はなんと優しいのだろうか。
ついでとは言え、レスティの母親の命を救ったばかりか、面倒まで見てやっている。
「は、はい! もちろん聞いておりました! ただ……」
「ただ?」
「いきなり獣人を仲間に加えると言われましても、正直戸惑いを隠せないといいますか……。獣人は荒っぽいですよ? 隷属の首輪をはめた状態でさえ、単純な力仕事ぐらいしか任せられません」
アイシャがそう指摘する。
獣人が人族と比べて荒っぽいのは確かだ。
だが、単純な力仕事しかできないというのは偏見だと思う。
実際、ブリケード王国ではそれなりの要職に就いているのを見たことがある。
――ああ、いや。
そういえば、この国では獣人に対する風当たりが酷かったか。
「確かに、アイシャさんの言うことにも一理あるかと思います!」
「私の村でも、十年以上前には獣人の村と諍いがあったらしいです」
スピカとサテラがそのようなことを言い出す。
「……レスティを仲間に加えるのは、俺が決めたことなのだが?」
「だ、だからこそです。ご主人様が不要なご苦労をされないよう、今のうちに忠言をしたいのです」
「そうですぜ! 獣人なんかと一緒に行動したら絶対揉め事が起きます!」
キーネやそのパーティメンバーの男たちまでもが同調し始める。
この国の獣人差別は根強いな。
違法奴隷商だけではなく、冒険者ギルド受付嬢、商会頭取の娘、村人、冒険者たちにまで浸透しているのか。
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