俺はギガント・ボアを撃破して少女を助けた。
次は村人たちを襲っているミドル・ボアどもだ。
「うわああぁっ! も、もう駄目だべぇっ!」
「だ、だが、逃げるわけにはっ! 村には女子供だって……」
「く、来るぞ!!」
「ブモオオオッ!!」
「「「ひぃいいいっ!?!?」」」
彼らはミドル・ボアの群れを前にして右往左往している。
正面から戦えば蹴散らされるしかないが、村を背後にして逃げることもできないといったところか。
何人かは、すでにやられて倒れてしまっている。
「仕方がない……」
ここは時間をかけずに速攻で決着をつけるとしよう。
ブレス系の魔法を使えば早いが、巻き添えしないように調整するのが面倒だ。
ここは――
「……【ドラゴンクロー】」
魔力を集中させ、右腕を変化させる。
腕を伸ばし、爪を巨大化させたのだ。
竜化状態の俺のほんの一部だけを顕現させたようなイメージだな。
「くたばれっ!」
「ギャウゥンッ!!」
俺は攻撃力を強化した状態でミドル・ボアに接近し、次々と切り裂いていく。
そして、ものの数十秒で全てを倒した。
「ふう……」
俺は息を吐きだし、右手を元に戻す。
すると、周囲からは大歓声が上がった。
「うおおおっ! 凄えっ! すげえべっ!!」
「たった1人であの数をっ!?」
「これで村は救われるっ!」
「助かりました!」
「よく見れば、あなた様はいつぞやの……」
「お久しぶりでございます。ライル殿」
村人たちが口々に感謝の言葉を口にする。
俺のこともちゃんと覚えてくれているようだな。
「ああ。久しいな。元気なようで何よりだ」
「はい。お陰さまで皆、無事でした。本当にありがたいことです」
「ははは。大げさだな。ところで――」
俺は周囲に倒れ伏している男たちに目を向ける。
全部で5人。
全員、かなりの深手を負っている。
ミドル・ボアとの戦闘で負った傷だろう。
「大丈夫か?」
「ぐぅ……ッ! い、痛てえ……。だが、死ぬほどじゃねえ」
「だ、大丈ぶー……です。まだ動ける……んぎゃあぁあっ!!」
「こりゃあ、骨が折れてるかもしれんべ……」
男たちはそれなりに重症ではあるようだったが、死んではいない。
戦闘不能状態ではあるが、命に関わるほどの怪我ではなさそうだ。
この分なら、放っておいても死にはしないだろうが――
「こいつらはどうするのだ?」
俺は村長に尋ねる。
「村を守るために戦った勇敢な者たちにございます。もちろん村に連れ帰り、静養させるつもりですが……」
「ふむ。まぁ、そうだろうな」
別に死んだわけではないので、普通に考えれば大きな問題はない。
だが、ここは山村だ。
怪我人を抱えていては、今後の村の運営に悪影響もあるだろう。
ここは一つ、実験を兼ねて手助けしてやるとするか。
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