「もちろん、お互いに争わないという消極的なだけの同盟ではありません。商業や学問分野などで協力態勢を敷き、お互いに利益を享受する関係を築いていきたいと考えております。貴方様にとっても悪い話ではないかと」
「ふむ……。確かに悪い話ではなさそうだな」
俺は顎に手を当てて考える素振りをする。
実際のところ、同盟を結ぶメリットは大きい。
しかしそれは、俺が『聖竜帝国(ホーリードラゴン・エンパイア)』の帝王として国の発展を真に願うのであれば、という前提が付く。
俺がこの国を乗っ取ったのは、あくまでルーシーの蘇生に繋げるためだ。
国や国民がどうなろうと、知ったことではない。
「俺からも一つ質問をしよう」
俺はニヤリと笑う。
使者はゴクリと唾を呑んだ。
「俺がその提案を断ったら、お前はどうする?」
「そ、それは……」
使者は顔色を悪くして口籠る。
彼は知っているのだ。
俺の機嫌を損ねれば、どうなるか。
「俺はブリケード王家から追放された身だぜ? 他国を乗っ取って帝王になった途端に同盟を結んでくれるほど、お人好しだと思うか?」
「それは……。しかし、我々と敵対すれば貴方様も厳しい戦局に置かれるのでは?」
「はっはっは。面白い冗談だな」
俺はケラケラと笑いながら言う。
使者は押し黙った。
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