「ちっ……! 東西南北をようやく平定したかと思えば、次は空か……」
俺は舌打ちする。
空に、飛竜の群れが現れたのだ。
「ご主人、あれは中級竜だぜ。ワイバーンのような竜もどきじゃない」
「ああ、分かってるさ。レスティ」
俺は全軍指揮官のレスティに答える。
一時期は妊娠によって戦線を離脱していたレスティだが、それも数年前のことだ。
今では、俺の右腕として復帰している。
彼女の娘もまた有望なのだが、今は置いておこう。
「周辺国家の脅威が薄まったから、軍は縮小していたというのに……」
「ご主人……。やっぱり、竜王リリアの敵討ちなのかな?」
「その可能性はあるが、それにしてはタイミングが遅い。妙だ」
俺は過去に思いを馳せる。
S級スキル【竜化】を意図的に暴走させようとしていた、竜王リリア。
彼女に助けられたこともあったのだが、最終的に俺は彼女を討伐した。
その竜王リリアの配下である竜族たちが敵討ちに来ること自体は、不自然ではない。
だが、タイミングがおかしいのだ。
俺がリリアを討伐してから、もう10年近くが経っている。
討伐した少しあとに、俺とルーシーが結婚式を挙げた。
それからロゼリアやロゼリアを側室に迎え、その他の準側室や愛人も含めて次々と妊娠していった。
一時的な戦力低下により、聖国や蛮族との戦いに苦戦した時期もある。
その後、戦局は徐々に落ち着きを取り戻し、ルークやリリナ、サティやミラなどの子どもたちとの時間を大切にして過ごしてきた。
「ご主人……。まさかとは思うが、竜王リリアは生きていたのか?」
「なぜそう思う?」
「いや……。竜族は強い奴に従うからさ。ご主人が討伐したはずのリリアは、実はかろうじて生きていて……。この10年でかろうじて動けるぐらいまでには回復し、その間に力を溜めていた。そして、その気配を感じ取った眷属たちがこの地にやってきた。……とか」
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