「くっくっく。ナタール連邦も、存外にあっけないものだな」
俺は口元を歪めて笑う。
ナタール連邦は滅亡した。
いや、正確に言えば俺たちによって征服された。
「な、なぁ……お兄ちゃん」
「どうした? ガルド」
俺の隣で、ガルドが青い顔で尋ねてくる。
彼――いや彼女は、媚びへつらうような態度で、俺の機嫌をうかがう。
「俺、ちゃんと頑張ったよな? だからさ、いつものアレはもう中止でいいよな?」
「あぁ。アレか……」
ガルドが言っているのは、定期的に与えているお仕置きのことだ。
俺からこいつへの恨みは、少しばかりボコったぐらいで解消されるようなものではない。
本当は、24時間365日ぶっ通しで拷問責めをしたいぐらいだが……。
A級スキル【剣聖】持ちの彼女とはいえ、耐久性には限界がある。
そのため、ちょっとした拷問を定期的に与えるようにしていた。
「そうだなぁ……。前は鞭打ちして、その前は剣山の上で正座させて、その前は爪の間に針を刺したっけか? 水責めにしてやったこともあったな」
「あ、あぁ。アレはもういいだろ? なっ? 俺はお兄ちゃんに忠誠を誓っているんだ。ナタール連邦を潰すときも、ちゃんと王たちを服従させてみせたじゃないか」
ガルドが、媚びた笑みを浮かべて言う。
まあ、確かにそうだ。
俺たちはナタール連邦を潰したが、国家としての基盤を全てぶっ壊したかったわけじゃない。
特殊素材『紅血の水晶石』を作りがてら、連中の戦意を挫くために大量虐殺しただけだ。
決して皆殺しにはしていない。
戦後の統治を円滑にするために、王たちもある程度は生かしておくつもりだった。
ガルドがその任務を無事に達成したことは事実である。
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