「くらえぇっ! 【ネクロ・ジャベリン】!!」
痩身の男がそう叫んだかと思うと、ゾンビと化したチンピラAとBがこちらに跳躍して突撃してきた。
まるで投げ槍のように鋭い攻撃だ。
これはまた、予想外の展開である。
「くっくっく……。まさか、こんな手でくるとはな。面白いじゃないか」
死体を操るC級の傀儡系スキル。
なかなか興味深い。
「だが、あいにくだな。俺には死体と戯れる趣味はないし、男と戯れる趣味もないんだ」
俺はゾンビの攻撃を軽く躱し、距離を取る。
もちろん殴り飛ばせば一撃だが……。
死体に触れるには汚いからな。
火魔法で消し炭にするのもいいが、火魔法ばかりというのも芸がない。
ここは――
「闇よ……」
――ズオオォッ!
俺は魔法を発動する。
俺の右手が黒い渦に包まれ、その中から巨大な漆黒の刃が飛び出した。
「なんだそりゃ! そんなもん、見たことがねぇぞ! いったい何のスキルだ!?」
「ふん。敵にネタバレするとでも? お前のようなバカといっしょにするな」
手の内は隠しておくものだ。
スキルや魔法の発動を容易にするために、最低限の呪文を唱える程度はいい。
だが、先ほどのコイツのように、自分の手持ちスキルの名前を明かすなど愚の骨頂である。
「はんっ! せいぜい、下級の魔法系スキルだろうが! 俺のC級スキル【ネクロマンス】の方が強いに決まってる! いけっ! ゾンビ共!!」
男の命令に応じて、再び襲ってくるゾンビたち。
「【ダーク・ブレード】」
俺はその全てを斬り払う。
斬られたゾンビたちは倒れることなく、虚空へと消えていく。
「ば、バカなっ! 何なんだ、そのスキルは!?」
「それを考察するのも戦いの醍醐味ではないか。何でも人に聞けば教えてもらえると思うなよ」
「ぐっ……」
男が怯えた様子で、俺から少し距離を取る。
「どうした? もう終わりか?」
「うるせーっ!! まだまだだ!!」
男はそう叫び、今度は懐からナイフを取り出した。
悪くはなさそうなナイフだが……。
「おいおい。そんなちっぽけな刃物で、俺がどうにかなるとでも?」
「粋がっていられるのも今のうちだ! これには強力な麻痺毒が塗ってある!」
「ほう……それは凄いが……」
ヒュンッ!
俺は超高速で動き、男の目の前に立つ。
そして、ナイフを奪い取ったのだった。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!