翌朝。
俺たちは、さっそく盗賊団の根城に向けて出発する。
メンバーは俺とリリア、それにギルマスの娘だ。
「よう。ずいぶんと早いじゃないか」
「お、おはようございます。ライル様、リリア様。お待たせするわけにはいきませんので、早めに待機しておりました」
ギルマスの娘がそうあいさつをしてくる。
ずいぶんと殊勝な態度だ。
昨日の俺の威圧がそれほどキツかったのか?
「今日は漏らすなよ」
「も、漏らしません! ちゃんと対策もしています!」
「それならいい。……ところで、あんたは何ができるんだ?」
「へ? あ、はい! 私は隠密行動や索敵能力に秀でています。それに、このあたりの地理も頭に入っております。道案内はお任せください」
「ふむ。期待しておこう」
「ではさっそく、こちらの馬車にお乗りください。昨日のうちに御者も手配しておきました」
女がそう言って、傍らの馬車を見る。
「せっかく用意してもらったところ悪いが、不要だ」
「はい? あの、それはどういうことでしょうか?」
首を傾げる女を俺は抱き上げる。
「ひゃっ!? ラ、ライル様……。まだ朝ですし、そういうことは早いですよぅ……」
「……」
何やら勘違いしている様子の女を無視して、そのまま肩の上に担ぎ上げた。
「御者よ。悪いが予定はキャンセルだ」
俺はそう一声掛けてから、街の外に向けて走り出す。
もちろんリリアも付いてきている。
「ひぃいいいっ!! は、速いです! 怖いです!!」
「我慢しろ。街の外に行くだけだ」
「そ、そんなこと言われましてもぉおおおっ!!!」
俺の疾走に、女が悲鳴をあげる。
それからものの数分で、俺たちは街を出た。
さらにしばらく進んでいく。
「よし。ここまで離れれば大丈夫じゃろう」
「そうだな。リリア」
俺とリリアは互いに顔を見合わせ、そう言う。
「な、何が大丈夫なのでしょうか? 街からずいぶんと離れましたが、まだまだ先は長いです。一度引き返し、やはり馬車を利用した方が……」
女がそう言う。
「だから馬車は不要だと言っているだろう」
「では、どのように向かわれるのです?」
「空を飛んでいくのだ」
「…………。えぇー!?」
驚く女を尻目に、俺はドラゴン形態へと変身する。
背中に女を乗せると、空に飛び上がった。
もちろんリリアも竜化している。
そして、そのまま目的地の方面に向かって進んでいく。
「うひゃああああああ!! 飛んでる、私、飛んでいます!!」
女が騒いでいる。
ヒイヒイ言いながらもかろうじて進むべき方向は示している。
「やはり、飛んでいくのが早いな」
「そうじゃの。街の近くでは飛べんかったからの」
俺はリリアとそんな会話をしながら、空を進んでいく。
やがて、前方に目的の場所が見えてきた。
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