S級スキル【竜化】持ちの俺、トカゲと間違われて実家を追放されるが、覚醒し竜王に見初められる。今さら戻れと言われてももう遅い。お前たちは、俺たちの属国として面倒を見てやるよ

猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

34話 は、速いです! 怖いです!!

公開日時: 2021年12月17日(金) 16:18
文字数:1,086

 翌朝。

 俺たちは、さっそく盗賊団の根城に向けて出発する。

 メンバーは俺とリリア、それにギルマスの娘だ。


「よう。ずいぶんと早いじゃないか」


「お、おはようございます。ライル様、リリア様。お待たせするわけにはいきませんので、早めに待機しておりました」


 ギルマスの娘がそうあいさつをしてくる。

 ずいぶんと殊勝な態度だ。

 昨日の俺の威圧がそれほどキツかったのか?


「今日は漏らすなよ」


「も、漏らしません! ちゃんと対策もしています!」


「それならいい。……ところで、あんたは何ができるんだ?」


「へ? あ、はい! 私は隠密行動や索敵能力に秀でています。それに、このあたりの地理も頭に入っております。道案内はお任せください」


「ふむ。期待しておこう」


「ではさっそく、こちらの馬車にお乗りください。昨日のうちに御者も手配しておきました」


 女がそう言って、傍らの馬車を見る。


「せっかく用意してもらったところ悪いが、不要だ」


「はい? あの、それはどういうことでしょうか?」


 首を傾げる女を俺は抱き上げる。


「ひゃっ!? ラ、ライル様……。まだ朝ですし、そういうことは早いですよぅ……」


「……」


 何やら勘違いしている様子の女を無視して、そのまま肩の上に担ぎ上げた。


「御者よ。悪いが予定はキャンセルだ」


 俺はそう一声掛けてから、街の外に向けて走り出す。

 もちろんリリアも付いてきている。


「ひぃいいいっ!! は、速いです! 怖いです!!」


「我慢しろ。街の外に行くだけだ」


「そ、そんなこと言われましてもぉおおおっ!!!」


 俺の疾走に、女が悲鳴をあげる。

 それからものの数分で、俺たちは街を出た。

 さらにしばらく進んでいく。


「よし。ここまで離れれば大丈夫じゃろう」


「そうだな。リリア」


 俺とリリアは互いに顔を見合わせ、そう言う。


「な、何が大丈夫なのでしょうか? 街からずいぶんと離れましたが、まだまだ先は長いです。一度引き返し、やはり馬車を利用した方が……」


 女がそう言う。


「だから馬車は不要だと言っているだろう」


「では、どのように向かわれるのです?」


「空を飛んでいくのだ」


「…………。えぇー!?」


 驚く女を尻目に、俺はドラゴン形態へと変身する。

 背中に女を乗せると、空に飛び上がった。

 もちろんリリアも竜化している。

 そして、そのまま目的地の方面に向かって進んでいく。


「うひゃああああああ!! 飛んでる、私、飛んでいます!!」


 女が騒いでいる。

 ヒイヒイ言いながらもかろうじて進むべき方向は示している。


「やはり、飛んでいくのが早いな」


「そうじゃの。街の近くでは飛べんかったからの」


 俺はリリアとそんな会話をしながら、空を進んでいく。

 やがて、前方に目的の場所が見えてきた。

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート