「これは……回復薬か……?」
「そうだ。これを飲ませれば、助かるぞ」
「そんな都合の良い話が……いや、お前らは人族だ……。何か企んでいるんだろう……!」
少女は警戒するように身構える。
しかし、俺は構わずに言葉を続けた。
「別に何もない。ただ、俺は奴隷商共を殺したし、こうしてお前に回復薬を与えた。誇りある者であれば当然するべきことがあるとは思っているが……」
こいつは希少種族の獣人だ。
高い戦闘能力を持っているはず。
もちろん俺と比べれば足元にも及ばないだろうが、駒はあって困ることはない。
「くっ……人族からの施しなんか……」
「言っている場合か? お前の母親は、放っておくとすぐにでも死ぬ。そしたら、お前は天涯孤独の身になるんじゃないか?」
「……ぐぅッ!」
俺の言葉を聞いた少女は唇を噛む。
そして、葛藤の表情を浮かべながら、俺のことを睨んできた。
「クソぉッ!! これは本当に回復薬なんだな!? 嘘だったら許さねぇぞ!!」
「ああ。約束しよう。ほら、早くしろ。母親が死んでも良いのか?」
「分かったよ! チクショウ!」
少女は受け取った回復薬を母親の口元に運ぶ。
母親はかろうじてそれを飲んでいく。
「母さん! 母さんしっかりして!」
「…………。ううっ……レスティ……?」
母親が僅かに反応を示す。
まだ意識はおぼろげが、ひとまず危機的状況は脱したようだ。
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