「――これは母さんに使ってもらいたい!」
なるほど。
獣人の彼女は、母親ともども奴隷狩りに捕まっていたようだ。
そして、奴隷商やチンピラたちから嬲り者にされていたのだろう。
基本的に、奴隷は商品だ。
手を出せば価格が下がる。
だが、一部の好事家商人は趣味と実益を兼ねて奴隷を痛めつけることがあると聞いたことがある。
「ふむ……」
俺は少女を見て値踏みする。
獣人の中でも希少種族の彼女は、きっちりと回復させて鍛えてやれば、使える駒になるだろう。
彼女が俺に従うかは別だが、奴隷狩りに遭った彼女の村は壊滅しているはず。
帰る場所などないし、かと言って人族の町で行く宛があるはずもない。
俺という絶対強者に従う方が彼女にとっても合理的だろう。
上級回復薬も安くはない。
母親なんぞ知ったことかと言って、上級回復薬を出し惜しみするのもありか――。
俺がそんなことを一考している時だった。
「――ガウッ! ありったけの薬をよこせ!!」
「むっ?」
少女が俺に飛び掛かってきた。
俺が彼女の母親を見捨てようとしていることがバレたのか?
完全に不意打ちを食らった形だが、S級スキル竜化を持つ俺の敵ではない。
軽く手を取り、投げ飛ばす。
「ぐえっ!?」
少女は地面に叩きつけられた。
そのまま仰向けに転がる。
後頭部を打ち付けたらしい。
やれやれ。
突然どうしたというのだろうか。
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