S級スキル【竜化】持ちの俺、トカゲと間違われて実家を追放されるが、覚醒し竜王に見初められる。今さら戻れと言われてももう遅い。お前たちは、俺たちの属国として面倒を見てやるよ

猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

154話 上から

公開日時: 2023年2月25日(土) 10:52
文字数:525

 俺たちが現在拠点としているストレアの町が属する国とブリケード王国の国境が見える。

 隣国同士なので多少の諍いはあるものの、ここ数十年ほどは大きな戦争は起きていない。

 せいぜいが、領土問題を巡る小さな争いがある程度だ。

 それも、最近になってようやく収束し始めているらしい。


「おお、あれだな」


 眼下に目的地が見えてきた。

 ミルカという少女がいる場所だ。


「よし、到着だな……って、大丈夫か?」


「う……うぅ……」


 声がしたので振り返ると、レスティがボロ雑巾のような有様になっていた。

 顔色は真っ青で、ガクガクと震えている。


「はは……まさかここまで速いとは思わなかったぜ……」


「キーネに続いてお前もか。気絶しなかっただけマシとはいえ……。紅猫族の名が泣くぞ?」


「…………」


 レスティは反応を示さない。

 おかしいな?

 まだまだ生意気で心が折れていない彼女ならば、突っかかってくると思ったのだが。


「レスティ?」


「うっぷ……!」


「!? ちょ!?」


「おろろろ……」


 レスティは口を手で押さえたかと思うと、そのまま吐瀉物を吐き出してしまった。

 竜化状態の俺の背中に、だ。

 彼女のゲロの生暖かい感触が俺を襲う。


「くそ! 汚ねえ! 何してんだよ!」


「うぅ……。酔っちまって我慢できなかった。す、すまねぇ……」

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