俺たちが現在拠点としているストレアの町が属する国とブリケード王国の国境が見える。
隣国同士なので多少の諍いはあるものの、ここ数十年ほどは大きな戦争は起きていない。
せいぜいが、領土問題を巡る小さな争いがある程度だ。
それも、最近になってようやく収束し始めているらしい。
「おお、あれだな」
眼下に目的地が見えてきた。
ミルカという少女がいる場所だ。
「よし、到着だな……って、大丈夫か?」
「う……うぅ……」
声がしたので振り返ると、レスティがボロ雑巾のような有様になっていた。
顔色は真っ青で、ガクガクと震えている。
「はは……まさかここまで速いとは思わなかったぜ……」
「キーネに続いてお前もか。気絶しなかっただけマシとはいえ……。紅猫族の名が泣くぞ?」
「…………」
レスティは反応を示さない。
おかしいな?
まだまだ生意気で心が折れていない彼女ならば、突っかかってくると思ったのだが。
「レスティ?」
「うっぷ……!」
「!? ちょ!?」
「おろろろ……」
レスティは口を手で押さえたかと思うと、そのまま吐瀉物を吐き出してしまった。
竜化状態の俺の背中に、だ。
彼女のゲロの生暖かい感触が俺を襲う。
「くそ! 汚ねえ! 何してんだよ!」
「うぅ……。酔っちまって我慢できなかった。す、すまねぇ……」
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