「こらこら、その手を離さないか」
「む~!!」
俺が優しく語り掛けると、赤子はさらに強く引っ付いてきた。
そして、俺の胸に顔を押し付けると、そのまま息を大きく吸い込んだ。
「すううううう」
「はわわわ!! ライル様の匂いが嗅がれています!」
「お、おい!! やめろ!! 何をやってんだ!!」
慌てるサテラとレスティをよそに、俺は冷静に対応する。
「大丈夫だ。何も心配はない。俺の体臭を気に入るなんて、見どころのある赤子だ。気に入ったぞ」
「は、はぁ……」
「アンタは乳飲み子にまで手を出すつもりなのか……?」
サテラとレスティがドン引きした視線を向けてくる。
「そんなわけないだろう。将来は良い戦士になれそうだと思っただけだ。――ほら、高い高いをしてやろう」
「きゃっきゃっ!」
俺が持ち上げてみせると、赤子は嬉しそうな声を上げた。
そのままグルングルン回転させてみる。
「あはははは! あい! うふふふ!」
赤子は楽しそうだ。
やはり見どころがある。
と、その瞬間、家の奥から気配を感じた。
「ライルさま!」
ミルカが駆け寄ってきた。
その表情には隠しきれない喜びの色が溢れていた。
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