「ぐっ……。チキショウ! 人族なんかに負けるか……! 村のみんなの敵だ!!」
やはり悪くない。
彼女は身体を起こしながら立ち上がると、素早くこちらに向かって構える。
獣人特有のしなやかな筋肉の動きが見て取れた。
「良い反骨心だ。しかし、俺はお前の村なんぞ知らんぞ。人族と一括りにするんじゃない」
「そんな言い訳――ッ!」
少女が飛び掛かる。
だが、甘い。
その程度のスピードでは、俺にかすらせることすら叶わない。
「あぐっ……!」
カウンター気味に入れた拳は、少女の腹に深く突き刺さっていた。
うっかり殺してしまうところだ。
(危ない、危ない……。せっかく便利な駒が手に入りそうなのに……)
俺は慌てて、少女から距離を取る。
これ以上戦うと、うっかり殺してしまいそうだ。
「すまん、つい力が入りすぎた」
「ううっ……」
少女は苦しそうに顔を歪めた。
腹部を押さえながら、うつ伏せになって倒れ込む。
「クソっ……! 人族め……!!」
この少女から人族への恨みは相当なものだな。
なにせ、回復薬を提供した俺に襲いかかってくるほどなのだから。
(面倒になってきたな……。恩知らずのようだし、殺処分しておくか……?)
戦闘能力という点では、有用そうな駒ではある。
だが、いつ裏切ったり他の人間との間に諍いを起こしたりするか分からない。
俺は思考を巡らせるのだった。
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