「ふむ……。リリアが実は生きていた可能性か……」
俺は考え込む。
確かにその可能性は否定しきれないか?
俺は、彼女の死体を確認できていない。
氷竜である彼女をブレスで消し炭にしたのだ。
S級スキル【竜化】を持つ俺のブレスだ。
かなりの高火力であり、骨すら残らなかったことも別におかしくない。
そう思い込んでいたのだが……。
「ご主人、どうするよ?」
「そうだな……。とりあえず対話でも……ん? リリナ?」
俺は、娘であるリリナの姿を見つける。
リリナは空を飛んでいた。
「父よ! あれ、やっつけてもいいのかえ? ルークが怖がっているのじゃ!」
「え? ああ……。別に討伐するのは構わないが……」
「分かったのじゃ! じゃあ、やっつけちゃうのじゃ!!」
リリナが飛竜の群れに向かって飛んでいく。
少し荒っぽいが、そこそこしっかりとした飛行制御だ。
「あ、ご主人……。大丈夫なのか?」
「……分からん」
「いや、『分からん』って……」
「俺も、リリナだけはよく分からん。まだスキルを持っていないのに、なんかよく分からん能力を持っているし……。どういう原理で飛んでいるんだ、あれは?」
「ご主人とルーシーの姉御の娘だからな……。なんかあるんだろ」
レスティが頷く。
高ランクスキルを持っている者の子どもは、高ランクスキルを得やすい傾向がある。
他にも、体格・知能・魔力量・容姿など、様々な要因が遺伝すると言われている。
S級スキル【竜化】を持つ俺の子なら、仮に相手方が平凡であっても中級以上のスキルを得る可能性は高いだろう。
ならば、ルーシーはどうか?
残念ながら、彼女は良いスキルには巡り会えなかった。
別に、彼女だけが不運というわけではない。
平民生まれは概ねそのようなものだ。
しかし、彼女は『大量の他者の魂をその身に宿している』という特異な事情を持つ。
俺が強引な手段で生成したエリクサーの副作用的なものだ。
自我が強く残っていた一部の者は、ホムンクルスの義体に魂を移して第二の人生を歩み始めているが……。
一部の魂は、今も彼女の体に宿っている。
その魂たちが何か影響しているのかもしれないし、影響していないのかもしれない。
要するに、何も分からない。
「うりゃーなのじゃ!」
リリナが可愛らしいかけ声と共に、竜の群れにブレスを放つ。
中級竜にすら効果抜群のそれは、彼らを一瞬で氷漬けにした。
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