「すまんな。俺が参加したことで、お前はお役御免になったようだ」
「ライル様がいらっしゃれば、あなたに用はありません。それでは、新しい仕事を探してみてくださいね」
「テメェら……なめやがってぇ……」
俺とアイシャの言葉を聞いて、男の怒りは頂点に達したようだった。
「ぶっ殺す!」
「それは困ります。ギルド内で暴力沙汰を起こすのは規則違反になります」
「うるせえ!!」
男が俺に殴りかかってくる。
アイシャは止めようとしたが、俺が目で制止した。
この程度、別に気にすることでもない。
俺は男の拳を右の小指で受け止めた。
「なっ!?」
「軽いな。蚊でも止まったのかと思ったよ」
「ふざけんなぁっ!」
今度は逆の手で、握りこぶしか。
それも小指で止める。
「弱い。弱すぎて話にならないな」
「こんにゃろ!」
続いてハイキック。
俺は人差し指と中指の間に挟んで止めた。
「ぐうぅ……」
「どうした? これで終わりか?」
「くそぉおおお! なんなんだ、お前は! お前は何者だぁ!?」
「俺か? 俺はただのBランク冒険者で、『聖竜の勇者たち(ホーリードラゴン・ブレイブズ)』のリーダーだよ」
「なっ!? れ、例の『聖竜の勇者たち(ホーリードラゴン・ブレイブズ)』だと……」
名前は知っているようだ。
俺も有名になったものだな。
だが、顔と名前が一致していないあたり、まだまだ中途半端な知名度のようだ。
まぁ、あまり有名になりすぎるとブリケード王国に気付かれるかもしれないから、今ぐらいがちょうどいいか。
「お前が高ランクのスキル持ちだって噂は本当なのか……?」
「さぁ? どうかな? お前ごときに教える義理はないな」
「ぐぬうっ!」
男が悔しそうな声を上げる。
実力の差を感じているようだ。
「クソダサいパーティ名にした奴はどんな勘違い野郎かと思っていたのによ。これほどの化け物だったとは聞いてねぇぜ」
「――は?」
今、なんて言った?
俺の聞き間違いじゃなければ、『クソダサいパーティ名』と言ったような……。
「くたばれ」
「ぷごっ!?」
俺は男を殴り飛ばした。
もちろん、加減はしている。
俺が本気を出せば肉体ごと消滅するし、ほどほど程度でも首から上がバイバイすることは確実だ。
ただ吹き飛んでいっただけという時点で、俺がどれほど手加減したか分かるというものだろう。
壁に激突した男は白目を剥いて気絶している。
「――なぁ、アイシャ」
「は、はい。なんでしょうか?」
俺の怒気を感じたのか、アイシャまで顔を青ざめさせていた。
「聖竜の勇者たち(ホーリードラゴン・ブレイブズ)……カッコいい名前だよな? クールでワイルドなパーティ名だと思うよな?」
「そ、そうですね。少なくとも私の中では最高です!」
「ああ、よかった。この男の感性が貧弱だっただけだよな」
「ソノトオリです」
アイシャがぎこちなく笑ってくれる。
パーティ名のカッコ良さを再認識したことだし、何も心配することはない。
違法奴隷商の摘発へ向けて動き出すことにするか。
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