「……っ!」
ロゼリアは当時のことを思い出しながら歯噛みした。
あの時、自分がもっと早く戻っていれば……こんな事態にはならなかったのに……!!
しかしまだ間に合う。
情報によれば、第一王子ライルと良く似た背格好の者が同じ名前を名乗り、冒険者として活躍しているという。
それだけではない。
なんと1年にも満たない短期間でAランクまで昇格したらしい。
彼が本当に第一王子ライルなのであれば、それはすなわちS級スキル【竜化】の覚醒に成功した可能性が高いということになる。
「――どうやらこの宿にいるようですね」
ロゼリアは、1つの宿屋にたどり着いた。
誰かに聞き込みをしたわけではない。
彼女の直感が、そこにライルがいることを告げたのだ。
「すぅ……はぁ……」
大きく深呼吸をし、心を落ち着かせる。
(よし、行きましょう)
そして、彼女は勢いよく扉を開けた。
「失礼いたします!」
「――来たか。待っていたぞ」
中にはライルがいた。
1年前に比べて少し雰囲気が変わっているものの、間違いない。
本物のライルだ。
1年ぶりに見たその姿に、ロゼリアは目頭が熱くなるのを感じた。
「若様! お迎えに参りました!!」
「誰が使者として来るのかと思っていたが……。お前とはな。ロゼリア」
「はい! 私は貴方様の親衛隊隊長ですから!」
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