S級スキル【竜化】持ちの俺、トカゲと間違われて実家を追放されるが、覚醒し竜王に見初められる。今さら戻れと言われてももう遅い。お前たちは、俺たちの属国として面倒を見てやるよ

猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

299話 1年後-2

公開日時: 2024年7月17日(水) 10:42
文字数:754

「バリオスの野郎が本国を固めてくれているから、まだ何とかなっている。あんなクソみたいな親父でも、一応は感謝しないとな」


「だが、それも限界だぜ。どうする? お兄ちゃん」


「……仕方ない。この平野は放棄する。そうすれば、時間を稼げるはずだ」


「放棄するだけじゃせいぜい1週間ぐらいしか稼げねぇんじゃないか? せめて2週間ぐらい稼げれば、ルーシーの姉御が出産を終えられるかもだが……」


「2週間か。それぐらいなら問題ないさ。こうすればいい」


 そう言うと、ライルはスキルの力を開放した。

 そして、彼は竜の姿となる。


「グルオオオォッ! ――【溶岩流星群(ドラゴン・ダイブ】!!」


 ライルが咆哮する。

 そして、空から溶岩の隕石を降り注がせた。

 それは瞬く間に聖国と蛮族の兵士たちを飲み込んでゆく。

 少なくない人数が犠牲になった。

 さらに、草原が溶岩の池と化す。

 これなら、ライルが言った通り2週間以上の時間を稼ぐことができるだろう。


「……どうだ? なかなかのものだろう? ――ぐっ!?」


「む、無理すんなよ! 暴走しねぇうちにさっさと戻れ、お兄ちゃん!」


「あ、ああ……」


 ライルが元の人間の姿に戻る。

 そして、彼はその場に倒れ伏した。


「はぁ……はぁ……」


「ちっ! 世話の焼けるお兄ちゃんだぜ」


 ガルドがライルに肩を貸す。

 2人は戦場から離脱した。

 もちろん、サテラやその他の兵士たちも一緒だ。


「はぁ、はぁ……」


「ライル様……」


「心配するな、サテラ。この一瞬じゃ、大して竜化は進行していないさ」


「でも……」


「これで時間を稼げるだろう。しばらくはゆっくりできる。……そうだ、ルーシーの出産にも立ち会おうかな。確か、双子だったよな?」


「はい。男の子と女の子だと聞いています」


「そうか……。楽しみだな」


 ライルが笑う。

 こうして、ライルたちは戦争の最前線から一時撤退したのだった。

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