「バリオスの野郎が本国を固めてくれているから、まだ何とかなっている。あんなクソみたいな親父でも、一応は感謝しないとな」
「だが、それも限界だぜ。どうする? お兄ちゃん」
「……仕方ない。この平野は放棄する。そうすれば、時間を稼げるはずだ」
「放棄するだけじゃせいぜい1週間ぐらいしか稼げねぇんじゃないか? せめて2週間ぐらい稼げれば、ルーシーの姉御が出産を終えられるかもだが……」
「2週間か。それぐらいなら問題ないさ。こうすればいい」
そう言うと、ライルはスキルの力を開放した。
そして、彼は竜の姿となる。
「グルオオオォッ! ――【溶岩流星群(ドラゴン・ダイブ】!!」
ライルが咆哮する。
そして、空から溶岩の隕石を降り注がせた。
それは瞬く間に聖国と蛮族の兵士たちを飲み込んでゆく。
少なくない人数が犠牲になった。
さらに、草原が溶岩の池と化す。
これなら、ライルが言った通り2週間以上の時間を稼ぐことができるだろう。
「……どうだ? なかなかのものだろう? ――ぐっ!?」
「む、無理すんなよ! 暴走しねぇうちにさっさと戻れ、お兄ちゃん!」
「あ、ああ……」
ライルが元の人間の姿に戻る。
そして、彼はその場に倒れ伏した。
「はぁ……はぁ……」
「ちっ! 世話の焼けるお兄ちゃんだぜ」
ガルドがライルに肩を貸す。
2人は戦場から離脱した。
もちろん、サテラやその他の兵士たちも一緒だ。
「はぁ、はぁ……」
「ライル様……」
「心配するな、サテラ。この一瞬じゃ、大して竜化は進行していないさ」
「でも……」
「これで時間を稼げるだろう。しばらくはゆっくりできる。……そうだ、ルーシーの出産にも立ち会おうかな。確か、双子だったよな?」
「はい。男の子と女の子だと聞いています」
「そうか……。楽しみだな」
ライルが笑う。
こうして、ライルたちは戦争の最前線から一時撤退したのだった。
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