「南部にある『水の街』を統治する領主だ」
「ああ、あいつか……」
俺はポンと手を打つ。
俺が征服した『ナタール連邦』は、小国からなる連合国家だ。
その統治体制は各国で異なっていた。
南部方面にあった『水の街』は、特殊な魔道具によって水運が発達している街だった。
その特殊な魔道具は、領主一族でしか発動できない。
だから、領主や統治体制はそのままにしておいてやったのだが……。
「ご主人、どうすればいい?」
「……? 分かりきったことだろう? 反逆者は殺せ」
俺は当然の答えを口にする。
レスティはぽかんとした表情になった。
「い、いや……。領主を殺したら、あの一帯に深刻な水不足が発生するぜ?。何人の民衆が死ぬか……」
「ああ、そういうことか」
俺は理解した。
レスティも、意外に優しいところがあるんだな。
「愚民が何人死のうと、関係ないな。そんな愚鈍な領主の下で暮らしている時点で、同罪だよ」
「なっ……!? ご、ご主人……? さすがにそれは……」
レスティは狼狽える。
本当に優しい奴だなぁ。
彼女は人族から奴隷として虐げられていたし、復讐心に燃えていると思っていたのだが。
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