ゴブリンの群れを蹴散らした。
しかし、後方から追加のゴブリンたちと、さらにはゴブリンキングが登場した。
「図体だけはでかいな。ほら、さっさとかかってこい」
「ごあああぁっ!」
ゴブリンキングが雄叫びを上げて、俺に向かってくる。
ゴブリンには最低限の知能がある。
人語を解することはないが、身振りや声色である程度の意思疎通はできる。
俺の言葉と態度から、挑発されたと受け取ったのだろう。
ゴブリンキングが金属製の棍棒を振り上げる。
どこかで拾った棍棒だろうか。
なかなかの迫力だ。
S級スキルの竜化が覚醒する前の俺なら、絶望していたはずである。
「ごあっ!」
ゴブリンキングが棍棒を振り下ろす。
速い。
棍棒が俺の頭部を襲う。
ゴキッ!
「きゃああぁっ!」
「だ、だから言ったのによ……。せめて、嬢ちゃんは俺たちといっしょに逃げるんだ」
Dランク冒険者の男女がそう言う。
俺がゴブリンキングの攻撃をモロに受けたのを見て、戦意を完全に喪失している。
2人だけで逃げるのではなくリリアにも声を掛けているあたり、悪いやつらではないのだろう。
「ふん。なぜ逃げる必要がある? よく見よ」
リリアが落ち着いた声でそう言う。
「その通り。俺がこの程度の攻撃でどうにかなるとでも思ったか?」
俺はゴブリンキングの棍棒を顔面で受け止めつつ、そう言う。
「な……。バ、バカな! あの攻撃を受けて無事だと!?」
「し、信じられないわ……」
男女が驚愕の声でそう言う。
「ご、ごあああぁ!?」
ゴブリンキングも混乱の声を上げる。
棍棒を再び振り上げようとするがーー。
ガシッ。
俺は棍棒を片手で掴む。
「ふん。雑なつくりだが、頑丈さは十分なようだな。悪くない棍棒だ。これをもらうことにしよう」
「ごあああぁっ!!!」
ゴブリンキングは必死に棍棒を自分のほうに引こうとする。
B級の魔物だけあって、そこそこの膂力だ。
しかしもちろん、S級スキルを持つ俺と比べれば足元にも及ばない。
俺は少しだけ強めに力を入れて、棍棒を奪い取る。
「ごあっ!」
ゴブリンキングは棍棒を取り返そうと、俺に素手で殴りかかってくる。
悪くない棍棒も手に入れたことだし、そろそろ終わりにするか。
せっかくだし、こいつから奪った武器で息の根を止めてやろう。
「雷霆八卦(らいていはっけ)!!!」
バリッ!
ズガン!
俺の雷魔法を纏った棍棒が、ゴブリンキングに強烈な一撃を叩き込む。
ちなみに雷魔法を使えるようになったのは最近だ。
S級スキルである竜化を使いこなせるようになった副次的な恩恵である。
「ごあ……」
ゴブリンキングが大ダメージを受け、倒れこむ。
俺は棍棒を振り上げーー。
「じゃあな」
グチャッ!
ゴブリンキングの頭部を叩き潰した。
これにて討伐完了だ。
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