「ほ、ほら! お兄ちゃんがエリクサーの素材にした奴らの声じゃないか!?」
「ん?」
ガルドに言われて、俺は記憶を探る。
そういえば、確かにそんなことをした気がするな。
エリクサーの最後の仕上げに、俺は手こずってしまった。
そこで、血ではなくて人々の魂を直接的に素材としてエリクサーを作製したのだ。
素材となった奴らの魂の残滓が、ルーシーを苦しませているということだろうか?
「そうなのか?」
俺はルーシーに尋ねる。
彼女は頷いた。
「たぶん……そうだと思う。たくさんの人が『死にたくない』『外に出たい』って言ってるんだ。頭の中に……声が響いて……」
「なるほどな」
俺は納得する。
素材になった時点で、もう奴らの命運は尽きているというのに……。
魂だけの状態になっても、意志を残しているのか。
害虫のようにしぶとい連中だ。
ルーシーは優しい娘だから、そんな彼らの魂を放っておけないんだろう。
「そうか……」
俺はルーシーに顔を近づける。
彼女はビクッと震えた。
どうしてそんなに怯えるのだろう?
ガルドのカスとは違って、俺はこれほどまでにルーシーのことを愛しているのに……。
「俺から『竜の加護』を授ける。そうすれば、そいつらの声は気にならなくなるはずだ」
「本当……?」
ルーシーは首を傾げる。
俺は頷いた。
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