「わーい! 父よ! リリナがやったのじゃあ!!」
「おい、油断するな。まだ終わってないぞ」
「……え?」
リリナは強いが、まだ10歳にもなっていない。
精神的に甘いところがある。
『グルオオオォ!! ジキリュウオウノザ、ワレガイタダク!!!』
多くの飛竜が氷漬けになった中、1体の竜だけが動き続ける。
他の個体よりも図体がでかい。
あれがリーダー格なのだろう。
油断していたリリナに、リーダー格が襲いかかるが――
「リリナ姉、危ない!」
一人の少年が、リーダー格とリリナの間に割り込んだ。
俺の息子であり、リリナの双子の弟であるルークだ。
「はぁっ!!」
彼は、炎を纏った剣を振るう。
その剣はリーダー格の首を切り落とした。
あの年でこの剣さばき……。
さすがは俺の子だ。
火属性の魔法も剣技も、俺がそこそこ得意としていた分野である。
ルークは、それを受け継いでいるのかもしれないな。
「リリナ姉は僕が守る! だから安心して!」
「う……うむ……」
ルークがリリナを抱きしめる。
リリナは、顔を赤くした。
「あ……ありがとうなのじゃ……」
リリナは礼を言う。
その表情は、まさに恋する乙女の表情だった。
双子なのに、そんな想いを抱くとは……。
大丈夫なのだろうか?
いや、俺も弟のガルドを女体化させていろいろやったし、あまり強くは言えないか……。
「ふぅ……」
俺はため息をつく。
とりあえず、空の軍勢の脅威は去ったようだ。
「よくやったぞ、ルーク。もちろんリリナもな」
「えへへ……。おとーさんに褒められたの、久しぶりだね」
「そ……そうか? 俺はいつも褒めているつもりなんだが……」
ルークに言われ、俺は口ごもる。
あまり褒められていないのだろうか?
そんなはずはないと思うが……。
「父よ! 今日の晩ごはんは、竜の丸焼きがいいのじゃ!!」
「そうだな。今夜は祝勝会だ」
俺はリリナとルークに微笑みかける。
空からの軍勢というちょっとしたハプニングはありつつも、今日も聖竜帝国には平和な時が流れていくのだった。
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