違法奴隷の元締めを探すべく、俺はスラム各地の賊の拠点を潰している。
数件目は趣向を変えて、特殊火魔法『プロミネンス・ボール』を1階に侵入させた。
4人の内の2人が炎上し、残りの2人は逃げ惑っている。
「お前らも道連れだああぁっ!!!」
「逃げるなああぁっ!!」
「ひ、ひいいぃっ!!」
「く、来るんじゃねええぇっ!!!」
なかなかにカオスな状況だ。
俺はそれを建物の外から眺めている。
下等な人間が無様に踊る姿は愉快だが、このまま仲間割れして燃え尽きるのを見ているだけというのも芸がないか。
そろそろ終わりにしてやろう。
ドガァン!!
俺は半焼していたドアを完全に蹴破り、屋内に突入する。
「な、なんだ!? 誰だお前はあああぁっ!!??」
「ああああぁ! 熱い、熱いっ!!」
「敵襲か!?」
「ちっ! 面倒なところに来やがったぜ!」
チンピラどもは動揺している。
燃えていない方の2人は足を止め、こちらを警戒している。
だが、その一瞬の隙が命取りだ。
「道連れだああぁっ!!!」
「ぎゃあっ!? ば、バカ野郎! こんなことをしている場合じゃ……ああああぁ!!!」
リーダー格の男が無事だった方の1人を襲撃し、火を移した。
これで火だるまは3人。
「くっ! こ、こっちに来るな!!!」
「ぐぎゃっ!!」
残った1人は必死に抵抗している。
棒切れを振り回し、他の奴らを寄せ付けないように頑張っている。
「まぁまぁ。お前たち4人は仲間だろ? そう酷いことをしてやるなよ」
「あっ!?」
俺は彼が持っていた棒切れを没収する。
これで奴は、抵抗する術を失ったのだ。
この室内で1対3では、逃げる方向も限られる。
「よ、よそ者が余計なマネを……っ! こ、こんなアジト知ったことか! 俺は逃げるぞ!!」
進退窮まった彼は、出口に向けて駆け出した。
燃え盛る3人から室内で逃げ切るよりは、この場を離れた方が生存率は高いだろう。
怖いのは持ち場を放棄したことによる同賊からの報復くらいだが、この場で焼け死ぬよりはマシといったところか。
だが――
「おいおい、それはないだろう? 仲間をおいて逃げるなんて薄情じゃないか」
ガシッ!
俺は逃げる男の手首を掴み、拘束したのだった。
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