キミと走る明日を -ゴースト・イン・ザ・メモリー-

たとえ、もう2度と会えなくなるとしても
平木明日香
平木明日香

第10話

公開日時: 2025年2月10日(月) 23:49
文字数:620


 「完全ダイブ……?」


 「前回、お前は短時間だけアクセスして戻ってきた。でも、それじゃダメだ。」


 ナオはモニターに複雑なプログラムコードを表示させた。


 「もっと深く、もっと長く。お前自身の意識を完全にデジタル世界に適応させる必要がある。」


 「でも……それって、戻ってこれるのか?」


 ナオは答えなかった。


 その沈黙が、何よりの答えだった。


 「お前がやろうとしてるのは、現実の肉体を捨てるのと同じことかもしれない。二度と戻れなくなる可能性もある。」


 「それでも……俺は行く。」


 即答だった。


 ナオは目を見開き、そして苦笑した。


 「……はぁ。お前、昔からそういうヤツだったな。」


 「頼む。準備をしてくれ。」


 ナオは無言でキーボードを叩いた。


 完全ダイブの準備が始まる——。



 「タクト、ひとつだけ聞く。」


 プログラムの最終設定をしながら、ナオが言った。


 「もし、早織が助からないとしたら——それでも行くのか?」


 タクトは静かに目を閉じる。


 そして、力強く言った。


 「俺は、早織と約束したんだ。」


 「約束?」


 「“約束の地に行こう”って。」


 「……バカだな、お前。」


 ナオはため息をつく。


 「……いいぜ。準備はできた。」


 タクトはスマホの画面を見た。


 そこには、新たなプログラムが起動していた。


 [GATE SYSTEM - FULL DIVE MODE]


 「カウントダウン開始……10、9、8……」


 タクトは息を呑む。


 「……3、2、1——」


 「——行くぞ、早織!!」


 タクトは画面をタップした。


 次の瞬間、意識が闇に沈む——。



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