*
翌朝、タクトは重い頭を抱えながら目を覚ました。
(……夢じゃなかった。)
確かに、あの世界にいた。
確かに、早織に会った。
だが、時間がなかった。
彼女の体は、どんどん薄れていっていた。
「このままじゃ、早織は本当に消えてしまう……。」
タクトはスマホを開き、[GATE SYSTEM] のアプリを確認する。
そこには、**「アクセス不可」**の文字。
(ダメだ……もう一度、あの世界に行く方法を探さなきゃ。)
タクトはすぐに白石ナオに連絡を取った。
「——やっぱり、お前が変なことに巻き込まれてる気がしてたんだよ。」
ネットカフェの個室で、ナオは呆れたように言った。
「マジで行ったのか? デジタル世界に。」
「……行った。早織がいた。」
「……マジかよ。」
ナオの顔色が変わる。
「……それ、ヤバいかもしれないぞ。」
「どういうことだ?」
「お前が行った世界、たぶん“システムの崩壊”が始まってる。」
「崩壊……?」
ナオはモニターを操作しながら説明した。
「仮想空間ってのは、常に維持されるプログラムがあってこそ存在できる。でも、そのシステムにエラーが発生すれば……世界自体が崩れる。」
「そんな……!」
「もしお前の話が本当なら、早織の意識は、あの崩壊する世界に囚われたままってことになる。」
「……じゃあ、どうすればいい?」
タクトの声は震えていた。
ナオは数秒沈黙した後、ゆっくりと口を開いた。
「方法は一つ——」
「——完全ダイブするしかない。」
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