剣も魔法も使えない黒蝶少女、異世界でも無双する?

引き込もりゲーマーが異世界でもやりたい放題
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耳年増と無効試合?

公開日時: 2021年10月12日(火) 07:04
文字数:2,716

姉妹との模擬戦が終了したのですが、何やら様子が……




 私はなし崩し的に、ナゴタとゴナタのお願いを聞き入れた。

 いつになるかわからないけど、双子の姉妹との混浴に……



『そ、それよりも』


 ていうか、今はそれどころではないよね? 何か忘れてない?

 私たちが何の為にここに来て戦ったのかを。



※※



 私とナゴタとゴナタの模擬戦は終わった。


 街の人たちは何だかんだで盛大に盛り上がってたように見えた。


 もちろん懸案の冒険者たちも同じように見えた。

 少なからず私たちにはそんな風に映った。



 だったら、


『…………終わったんだよね? なんで、ルーギルもクレハンも終わりにしないの? 終了を宣言しないの?』


 訓練場の真ん中で、何やら話し合っている3人に視線を向ける。

 ルーギルとクレハン、そして一人加わった冒険者のまとめ役のギュウソに。



『あれ? なんであの幼女もあそこにいるの?』


 最初は小さくてその姿が見えなかったが、ナジメがルーギルたちの足元にいた。

 そして何やら話し合いに混じっている。



「あっ、スミカお姉ちゃん」

「うん、どうしたの?ユーア」


 隣にいるユーアに顔を向ける。


「羽根が少し大きくなってないかな?」

「へ? 羽根が」

「うん、いつもより大きくなってるよ」

「う~~ん、そう言われてみれば、少し大きくなってるかも」


 ユーアに言われて首を回して見てみたが、確かに視界に映る部分が多く見える。

 形や色は全く変わらず、大きさだけが変化したようだ。



「そうだよねっ! 前よりも蝶ちょみたいになったよスミカお姉ちゃんっ! もしかしたら飛べるのかなっ! いいなぁっ!」


 キラキラした目で背中の羽根を見つめる。


「う~ん。それは無理みたいだね。ユーア」

「え? それは残念です…… スミカお姉ちゃんが飛ぶの見たかったです」


 ヒラヒラと動かしてみたけど、飛ぶどころか全く浮かなかった。

 そもそもそんなに高速で動かせないし、大きさも足りない。


『てか、そもそもなんで大きくなったの?―――― ああ、なるほどね』


 そっとステータス画面を見て一人納得する。

 これでは飛べるわけがないと。




「本当ですね、お姉さまっ! 前よりも魅力的ですよっ!」

「なら、ワタシの『蜜』吸ってくれよっ! 蝶だけに。なんてなっ!」


「「「えっ!?」」」


「え?」


 ナゴタは良いとして、ゴナタの言葉に一瞬硬直する。

 冗談なのか本気なのか知らないけど、そこはかとなくセンシティブなセリフに。


「ゴナちゃんっ! あなた自分が何を言ってるかわかってるのっ!?」

「ゴ、ゴナタ、そ、そう言う冗談はやめてよねっ!」

「ゴナ師匠の変態っ! 痴女っ! 露出狂っ!!」


「え?」


 そんなハレンチともとれる台詞に、私とナゴタと何故かラブナが反応していた。

 大人の私とナゴタはいいとして、なんでラブナが反応してるのだろう。

 確かユーアの1歳年上なだけだよね?



「へっ? なんでそんなに怒ってるんだい? 顔を赤くしてさ。ってかラブナ、お前は師匠に向かってなんてことを言ってるんだよっ! ちじょって何だっ!」


「へっ? う、わああああ――――っ!」


「……………」

「……………」


 ゴナタは意味も分からずにラブナを追いかけ始めた。

 そんな二人他所に、いの一番に反応した姉のナゴタを覗き込む。


「~~~~っ!!」


 視線が合ったナゴタは「カァ~~ッ」と真っ赤になって下を向いてしまった。

 ずっと一緒だったこの姉妹の、なぜか姉だけが耳年増だった。


 まあ、それを言ったらラブナが一番だけどね。あの年齢でさ。

 それと私のユーアに変な事教えてないよね?


 えっ!? 私? 

 私はほら、精神年齢的には一番年上だからね。色々とね。




※※※※




(いやっ―――――――?))

(だから―――――――っ!?))

(うん―――――――?))

((はあっ! ―――――かっ!))

((――まあ ―――――だろう?))



 私たち以外のたくさんの声が聞こえる。

 街の人たちも冒険者も一緒になって、ガヤガヤと何かを話し合ってる。


 ただそれは、野次や文句と言った、誰かを乏しめるものではなく、

 どちらかと言うと――――――



『――――困惑している?』


 そうそんな感じ。


 隣同士や顔見知り同士で首を傾げ話している様子は、何か困ってると言うか、なんか納得できてないって言うか、何やらハッキリしないといったそんな表情だ。


 正直、あまりいい雰囲気だとは思わない。

 私たちの全ての試合が終わった後で、この様子はどこか不安になる。



「う~ん」


「お姉さま、これは一体? もしかして今回の件、私たちは失敗…………」

「お姉ぇ…………」


「ナゴタさん、ゴナタさん……」

「師匠たち、まさかっ!」


 街の人たち、そして冒険者たちの表情を見て何となく察する。

 それに合わせるかのように、シスターズの面々の表情にも影が差す。



「ちょっとルーギルっ! 一体どうなってんのっ!」


 中央に集まって、未だ話し合っている4人に大声を上げる。

 少しの殺気と、ちょっとの怒気を含んで、鋭く睨む。



 ここまでやって収穫無しじゃ、割に合わないし、やりきれない。

 二人とも全力で戦ったんだから、それに見合う結果が欲しい。 


 一番の目的は、この姉妹のこれからの事なんだから。


 この街を出ていくか、私たちと一緒に街で暮らせるかの。



「オ、オウッ! 待たせて悪りいなッ! 今ようやく話が纏まったからそっち行くぜッ! それじゃ、俺はスミカ嬢たちに説明してくるッ。お前たちは街のやつらと冒険者をたのむッ!」


 私の呼びかけに気付いたルーギルは、話し合ってた他の3人に何かの指示を出し、こちらに小走りで駆けてくる。

 因みにナジメだけには声を掛けず、その場に残ってはいたけど。



「アア~、なんだァッ、かなり言いづらいんだけどよォ――――」


 ルーギルは何やら苦虫を嚙み潰したような表情で話し出す。

 この顔から察するに、あまりいい話ではなさそうだ。



「それはいいから、一体どうなったの?」


 それでも聞かないと話が進まないので、ルーギルに問いかける。

 シスターズの面々は、一様に口を閉ざし話に注視している。



「ア~~、今のお前たちの模擬戦の話なんだかよォ、どうやら良く分からなかったんだよォ。って言えばわかるかァ?」


 頭の後ろをガシガシ搔きながら、私たち全員に視線を送る。


「全然」


「「「………………」」」


「まァ、そうだよなッ。ならハッキリ言うぜッ? さっきのお前たちの、ナゴタとゴナタの模擬戦は『見えなかった』んだよッ!」


「はぁっ!? いきなり何言ってんの? 見えなかったって何? 私とナゴタとゴナタはキチンと戦ったよねっ! みんな何見てたの?」


 意味の分からない、ルーギルの答えに心外だと詰め寄る。


 見えなかったってどういう事? 

 私みたいに消える訳じゃないし。



「それじゃ、一から説明するぜッ? まず最初のナゴタとの戦いからだッ」


 こうして、誰も納得できない私たちに、ルーギルの説明が始まった。


 その『見えなかった』と言っている、内容とは……




次回、ルーギルより語られるその理由とは。

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