基本は『ほのぼの』とお話が『スローペース』で進んでいきます。
主人公の澄香は剣も魔法も使えませんが、引きこもり時代のチート装備(衣装)の透明壁のスキルが使えます(ゲーム内アバターも)
西洋ファンタジーにSFゲームの武器を持ち込んだイメージです。
主人公の澄香は妹が大好きです。
※全体的にのんびりと進んで行きます。
※少女・幼女の成分が増えていきます。
※ちょっとだけ残酷な表現があります。
『いつも助けてくれて、ありがとう。澄香お姉ちゃん――――』
「待っててねっ! 清美っ! 今行くからっ!!」
私は、敵を、撃ち抜き、切り裂き、爆殺し、撲殺、絞殺していく。
妹の清美を囲む敵をあらゆる手段を使って消していく。
私の攻撃で致命傷を受けた敵全てが、淡い光となって消滅していく。
「清美っ! お姉ちゃんが来たからもう安心だよっ! 出てきても大丈夫っ!」
「へっ?」
私は【レストエリア】に隠れている清美に、そう声を掛ける。
一応索敵するが、もう周りに敵はいない。
「ううっ~」 キョロキョロ
そんな清美はひょこっと顔だけ出して様子を伺っている。
「あっ!!」
そして、私を見つけて、トテテと小走りに駆け寄ってくる。
タタタッ
ガバッ!
「こ、怖かったよぉ~~! 澄香お姉ちゃんっ!!」
「うん。ごめんね。遅くなっちゃって」
そう言って胸に抱き着いてくる。
私は「よしよし」と言って、いつものように頭を撫でる。
「でも清美、いつも言ってるでしょう? レストエリアから出るときは狙われやすいんだから、まずは索敵をして、閃光手榴弾とかグレネードで――――――」
「いつも助けてくれて、ありがとう澄香お姉ちゃん!!」
最後まで言い終わる前に、更にキュッと強く抱き着いてくる。
そんな妹の清美に、私はまだ色々と言い足りなかったのだが、
「いいのよ、妹を守るのはお姉ちゃんの仕事でしょう? だから気にしないでいいよ」
「え―っ! だったらボクのお仕事は?」
「あ~、それはね――――」
私はギュッと清美を抱きしめながら、
「妹は、お姉ちゃんに甘える事が仕事なのよ」
妹の清美を無理やり誘って始めたSF世界の某VRMMOだったが、元々の性格なのか、はたまた単純に不器用なのか?
なかなかスキルが上がらずに、清美はいつも私に助けられてしまう。
いや、一番の理由は子供だったからだろう。
姉の私よりも一回り以上、歳が離れているのだから。
そんな私は、可愛い妹を守るために、このVRMMOの世界で――――
がむしゃらに強くなって、ソロ最強プレイヤーまで登り詰めたのだから。
※※※
「ううん………………」
懐かしい夢を見ていた。
清美がこの世界からも、元の世界からも、
いなくなってから、もう5年以上前の出来事だ。
思い出すたび、夢で見るたびに、
あの出来事は私の胸を強く締め付ける。
けれど――――
久し振りに見た、悲しい筈だった清美の夢は、
何故か私の心を暖かく優しく包み込んでいた。
――――いつも助けてくれてありがとう。澄香お姉ちゃんっ!
そんな清美の言っていた事に思い馳せながら、私の意識は現実に戻っていった。
そして、いつもの様に、いつもの時間に、いつもの部屋で目を覚ます筈だった。
筈だった。なのに…………
なんで、こうなったの!?
「っ!?」
私ははっと目を見開く。
「い、いやいや嘘でしょうっ!」
なんで起きたら目の前に『顔』があるのっ!?
そう、目を開けてみたら、目の前に顔っていうか、私の上に被さるように、決して触れない位置で人が乗っていたのだ。
ちょうど私と重なって寝ているように――――
「し、しかも…………」
浮いているっ!?
「こ、これって一体どういう状況っ!? た、確か私は……」
いつものように、陽が昇り切るまでログインしてたはず。
リアルよりも、一日の滞在時間が逆転してしまった、あのゲームに。
大事な者と、大事な時間をたくさん過ごした。
そして手に入れた以上に、失ったものもたくさんあった。
悲嘆も虚無感も絶望も、相反する歓喜も愉悦も希望も
全てを経験した、あのゲームにいたはず。
なのに、ここって?
「………………ん」
首を捻って周りを見てみる。
明らかに部屋の風景ではない。
「これって、もしかして違う世界なの?」
なんとなく肌に感じる、温度や風や風景がここは違うと感じる。
なんの証拠も確証もない、けれど――――
「………………うん、でも」
ただ、この世界は綺麗だなって思った。
見たことのない木々や、鮮やかな花や蝶。
嗅いだことのない穏やかな空気に、暖かく体を撫でる風。
そして森の隙間から覗く真っ青な空。
私は息を吸い込み、小さく深呼吸する。
「ふぅ………… ここきっと、違う世界なんだ……」
誰に言うでもなく一人呟く。
きっとそうだ。
そうに違いない。
それでも――――
私はそれでいいと思った。
そんな私は、私の世界をきっと抜け出せる切っ掛けが欲しかったんだと思う。
清美がいなくなって5年以上。
ひたすらに強くなろうと、清美のいないこの部屋で、清美のいないゲームの世界で、清美を守る為に、ただただ強くなった…………。
そこに清美はいないとわかっていても、私は、そこから抜け出せずにいたんだ。
でも今は…………
ホッとしている私がここにいる。
そう、これでいいんだ。
ここからは、私自身で変えないといけないんだ。
「それじゃ、そろそろこの状況も変えないとね?」
目の前の浮遊している謎の少年?少女?を見てそう呟いた。
そしてこの邂逅こそが、この世界に於いての生きる糧となり意味となった。
私が、私に戻れる、運命の出会いがこの世界にはあった。
ここまでお読みくださってありがとうございますっ!
後ほど、0章として人物とアイテムの情報を公開いたします。
これからもよろしくお願いいたします。
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