間にラブナの回想を挟んでしまったので、本編を忘れた方は3話前の
『蝶の英雄』ってなんで?
に戻るとわかります。
レストエリアを覆っていた、透明壁を解除する。
クレハンの話は、道すがら出来ると思ったからだ。
「それじゃみんな街に帰ろうか。どうする帰りも私の魔法に乗っていく?」
後ろを振り向いて、現在ここにいる仲間の、
私(Cランク)『D』
ユーア(Eランク)『AA』
ナゴタ(Bランク)『G』
ゴナタ(Bランク)『G』
ルーギル(元Dランク)
クレハン(元Eランク)
の5人に問いかける。
因みに『 』は私の予想の胸部ランクだ。
※一部実寸も混ざっている。多分私の(ボソ)
ここまで来るときは、私の透明壁を浮かせて、それに乗ってきたからかなりの時間短縮になった。だったら帰りも使わない手はない。
特に何も理由がないならば、その方がいいだろう。
「ん~、そうだなァ、その方が楽できんもんなッ! でもなぁ~~」
「そうですね、お願いできますでしょうか? スミカさん」
「スミカお姉ちゃん、お願いします」
「スミカお姉さま、私たちもよろしくお願いいたします」
「スミカ姉っ! よろしくなっ!」
「うんわかった。それじゃそうしようか。荷物はどうする? みんな自分で持つ? それとも私の収納魔法に入れる?」
行きと同じで、そうしたように一応確認する。
「いいえ、時間もかからない事ですし、乗せてもらっているだけなので」
「ボクは大丈夫ですっ!」
「私たちも大丈夫です。マジックバッグに収まっているので」
「うん、うんっ」
((でもよォ、旅の醍醐味ってのもよォ~~~~))
「うん、わかった。それじゃ、これにみんな乗って」
私は行きと違い、ちょっと大きく視覚化した透明壁[□]を地面から1メートル程の高さに展開する。カラーは行きと一緒の緑の色だ。
((まぁ、楽して帰るのも、悪かねえがッ、のんびり旅の話をしながら~~))
「よし、みんな乗ったねっ。それじゃ私たちの街に帰るよっ」
みんなが乗ったのを確認して、透明壁を後ろに移動させる。
私が前にきて、みんなを牽引するみたいな感じだ。
「それじゃ、しゅぱ――――つっ!!」
私は透明壁を浮遊させたまま走り出す。
道が狭い所は跳んで行けばいいだろう。と考えながら、行きと同じように、まだもたもたしているルーギルをぶち抜く。
「あ、お、おいッ! お前らまたッ!」
「え? あ、あれ? スミカお姉ちゃん、ルーギルさんを忘れてるよっ!」
「ス、スミカさん、帰りもギルド長を忘れていくんですかっ?」
「ルーギルは一人で歩いて帰って来るんじゃない? なんかずっと悩んでたみたいだし」
慌てる二人に素っ気なく答える。
だって一人で盛り上がってたし。
「で、でもぉ、スミカお姉ちゃん。乗せて上げてよぉ~」
「す、すいませんスミカさん、引き返してもらっていいですかっ?」
「わかったよ。ただの冗談だから。きちんと乗せていくよ」
キュッ ズザザ――
懇願する二人に答えてUターンする。
クレハンだけならまだしも、ユーアから言われたんじゃ仕方ない。
『今度こそ乗車賃、貰ってやろうかな』
なんて、心の中で愚痴ってみた。
――
「ったく、お前らよォ~ 俺は一応ギルド長なんだけどよォ。なんで忘れるかなァ。この討伐はギルド長でもある、俺の依頼なんだがよォ、まさか依頼主を置いてけぼり――――」
折角わざわざ引き返して乗せて上げたのに、グチグチとルーギルの小言が止まらない。ユーアとクレハンがなんとか宥めてくれてるみたいだけど。
『まあ、忘れたんじゃなくて、本当はわざとなんだけどね、今回もさ。 ん? 忘れる? ――――』
ルーギルの愚痴に内心でほくそ笑みながら、気になる単語が出てきて思考が止まる。
忘れる?
「あああっ! 忘れたあぁっ――――!!」
「うわっ! な、何っ! スミカお姉ちゃんっ!!」
前を走る私の突然の絶叫に、驚いて聞き返すユーア。
「どうしたのですかっ! スミカお姉さまっ!!」
「どうしたんだっ! スミカ姉っ!!」
「うおッ! 一体何だってぇんだッ! スミカ嬢ッ!」
「ス、スミカさんっ!?」
ユーアに続いて、他の面々も驚きの声を上げる。
「ナゴタっ! ゴナタっ! あれ、忘れてきちゃったよっ!」
私は他の面々より先に、姉妹の二人に声を掛ける。
姉妹の二人なら「あれ」を知っているから。
「えっ? あれですか? んん、何でしょう? あれって」
「スミカ姉っ! あれって何だいっ?」
「え?」
姉妹の二人は、分からずと言った様子で首を傾げる。
妹のゴナタならまだしも、しっかり者の姉のナゴタまでも忘れていた。
『だ、だめだね、これは…… なら仕方ない。ユーアをびっくりさせたかったけど、一旦戻って迎えに行くしかないっ!』
若干落ち込みながら、それでも即決をする。
「みんなっ! 忘れ物したから一旦、設営したところに戻るねっ!」
「「「え?」」」
ズザザッ!――
驚くみんなを他所に再度Uターンをする。
そしてすかさずMAPと索敵モードに切り替える。
きっとまだあそこにいるはずだから。
『えっ!?』
視界に映る高速で動くマーカーを見て驚いた。
※
ペロペロッ
『わうっ』
(ああ、新鮮なお肉美味しかったなっ)
『くうん、くうん』
(蝶のお姉さんの合図まだかなあ?)
『わうっわうっ!』
(早くあの、わたしを救ってくれた女の子に会いたいなっ!)
『く~~ん ――――』
(でも、この前会った時、ペロペロしようとしたら高い所から落っこちちゃったんだよね?)
『くんっ』
(わたしが追っかけた時は、あの蝶のお姉さんがいたから逃げちゃったけど)
『く~~ん、わうわうっ!』
(あの、蝶のお姉さんの話だと、会わせてくれるって言ってたから無事だったんだよねっ! 良かったっ!)
ガバッ
『わうっ!』
(あれ? あの女の子の匂いが遠くに行っちゃうっ!?)
『わう~んっ!!』
(は、早く、追いかけなきゃっ!)
ダダッ!
シュタタタタ――――
『わうっ! わうっ!』
(わたしは、会いに行くんだっ!)
『わう~~~~~~ん!!』
(わたしを救ってくれたあの子に会いにっ!)
そして、また背中に乗ってもらうんだっ!
次回は感動の対面を果たします。
きっといいお話です。『わうっ!』
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