剣も魔法も使えない黒蝶少女、異世界でも無双する?

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第8蝶 ちょうちょの英雄編3

街への道中と忘れ物

公開日時: 2021年5月26日(水) 18:08
文字数:2,366

間にラブナの回想を挟んでしまったので、本編を忘れた方は3話前の

『蝶の英雄』ってなんで?

に戻るとわかります。




 レストエリアを覆っていた、透明壁を解除する。

 クレハンの話は、道すがら出来ると思ったからだ。



「それじゃみんな街に帰ろうか。どうする帰りも私の魔法に乗っていく?」


 後ろを振り向いて、現在ここにいる仲間の、



 私(Cランク)『D』


 ユーア(Eランク)『AA』

 ナゴタ(Bランク)『G』

 ゴナタ(Bランク)『G』

 ルーギル(元Dランク)

 クレハン(元Eランク)


 の5人に問いかける。


 因みに『 』は私の予想の胸部ランクだ。

 ※一部実寸も混ざっている。多分私の(ボソ)



 ここまで来るときは、私の透明壁を浮かせて、それに乗ってきたからかなりの時間短縮になった。だったら帰りも使わない手はない。


 特に何も理由がないならば、その方がいいだろう。



「ん~、そうだなァ、その方が楽できんもんなッ! でもなぁ~~」


「そうですね、お願いできますでしょうか? スミカさん」

「スミカお姉ちゃん、お願いします」


「スミカお姉さま、私たちもよろしくお願いいたします」

「スミカ姉っ! よろしくなっ!」


「うんわかった。それじゃそうしようか。荷物はどうする? みんな自分で持つ? それとも私の収納魔法に入れる?」


 行きと同じで、そうしたように一応確認する。



「いいえ、時間もかからない事ですし、乗せてもらっているだけなので」

「ボクは大丈夫ですっ!」


「私たちも大丈夫です。マジックバッグに収まっているので」

「うん、うんっ」



((でもよォ、旅の醍醐味ってのもよォ~~~~))



「うん、わかった。それじゃ、これにみんな乗って」


 私は行きと違い、ちょっと大きく視覚化した透明壁[□]を地面から1メートル程の高さに展開する。カラーは行きと一緒の緑の色だ。



((まぁ、楽して帰るのも、悪かねえがッ、のんびり旅の話をしながら~~))



「よし、みんな乗ったねっ。それじゃ私たちの街に帰るよっ」


 みんなが乗ったのを確認して、透明壁を後ろに移動させる。

 私が前にきて、みんなを牽引するみたいな感じだ。



「それじゃ、しゅぱ――――つっ!!」



 私は透明壁を浮遊させたまま走り出す。



 道が狭い所は跳んで行けばいいだろう。と考えながら、行きと同じように、まだもたもたしているルーギルをぶち抜く。



「あ、お、おいッ! お前らまたッ!」


「え? あ、あれ? スミカお姉ちゃん、ルーギルさんを忘れてるよっ!」

「ス、スミカさん、帰りもギルド長を忘れていくんですかっ?」


「ルーギルは一人で歩いて帰って来るんじゃない? なんかずっと悩んでたみたいだし」


 慌てる二人に素っ気なく答える。

 だって一人で盛り上がってたし。


「で、でもぉ、スミカお姉ちゃん。乗せて上げてよぉ~」

「す、すいませんスミカさん、引き返してもらっていいですかっ?」


「わかったよ。ただの冗談だから。きちんと乗せていくよ」


 キュッ ズザザ――


 懇願する二人に答えてUターンする。

 クレハンだけならまだしも、ユーアから言われたんじゃ仕方ない。


『今度こそ乗車賃、貰ってやろうかな』


 なんて、心の中で愚痴ってみた。



――



「ったく、お前らよォ~ 俺は一応ギルド長なんだけどよォ。なんで忘れるかなァ。この討伐はギルド長でもある、俺の依頼なんだがよォ、まさか依頼主を置いてけぼり――――」



 折角わざわざ引き返して乗せて上げたのに、グチグチとルーギルの小言が止まらない。ユーアとクレハンがなんとか宥めてくれてるみたいだけど。



『まあ、忘れたんじゃなくて、本当はわざとなんだけどね、今回もさ。 ん? 忘れる? ――――』


 ルーギルの愚痴に内心でほくそ笑みながら、気になる単語が出てきて思考が止まる。



 忘れる?



「あああっ! 忘れたあぁっ――――!!」



「うわっ! な、何っ! スミカお姉ちゃんっ!!」


 前を走る私の突然の絶叫に、驚いて聞き返すユーア。


「どうしたのですかっ! スミカお姉さまっ!!」

「どうしたんだっ! スミカ姉っ!!」

「うおッ! 一体何だってぇんだッ! スミカ嬢ッ!」

「ス、スミカさんっ!?」


 ユーアに続いて、他の面々も驚きの声を上げる。



「ナゴタっ! ゴナタっ! あれ、忘れてきちゃったよっ!」


 私は他の面々より先に、姉妹の二人に声を掛ける。

 姉妹の二人なら「あれ」を知っているから。



「えっ? あれですか? んん、何でしょう? あれって」

「スミカ姉っ! あれって何だいっ?」

「え?」


 姉妹の二人は、分からずと言った様子で首を傾げる。

 妹のゴナタならまだしも、しっかり者の姉のナゴタまでも忘れていた。



『だ、だめだね、これは…… なら仕方ない。ユーアをびっくりさせたかったけど、一旦戻って迎えに行くしかないっ!』


 若干落ち込みながら、それでも即決をする。

 


「みんなっ! 忘れ物したから一旦、設営したところに戻るねっ!」


「「「え?」」」


 ズザザッ!―― 


 驚くみんなを他所に再度Uターンをする。

 そしてすかさずMAPと索敵モードに切り替える。


 きっとまだあそこにいるはずだから。


『えっ!?』


 視界に映る高速で動くマーカーを見て驚いた。




 ペロペロッ



『わうっ』

(ああ、新鮮なお肉美味しかったなっ)


『くうん、くうん』

(蝶のお姉さんの合図まだかなあ?)


『わうっわうっ!』

(早くあの、わたしを救ってくれた女の子に会いたいなっ!)


『く~~ん ――――』

(でも、この前会った時、ペロペロしようとしたら高い所から落っこちちゃったんだよね?)


『くんっ』

(わたしが追っかけた時は、あの蝶のお姉さんがいたから逃げちゃったけど)


『く~~ん、わうわうっ!』

(あの、蝶のお姉さんの話だと、会わせてくれるって言ってたから無事だったんだよねっ! 良かったっ!)


 ガバッ


『わうっ!』

(あれ? あの女の子の匂いが遠くに行っちゃうっ!?)


『わう~んっ!!』

(は、早く、追いかけなきゃっ!)



 ダダッ!


 シュタタタタ――――



『わうっ! わうっ!』

(わたしは、会いに行くんだっ!)


『わう~~~~~~ん!!』

(わたしを救ってくれたあの子に会いにっ!)



 そして、また背中に乗ってもらうんだっ!



次回は感動の対面を果たします。

きっといいお話です。『わうっ!』

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