今回で大豆編は終わる予定だったのですが…………
あと気が付くとネコ語を付けるのを忘れてしまい修正が大変でした。
今回も是非よろしくお願いします。
「あらぁ、随分と賑わってるじゃないのぉ――っ!」
人混みの中から、見知った全身黒の革タイツのムキムキ男が声を掛けきた。
「ニスマジ、あなたも結構な人数集めてくれたんだにゃ!」
まぁ、ガチムキのオネェ軍団だけど。
「じぃ~~」
「にゃっ!?」
ギュッ
ニスマジの視線から隠す様に、とっさに二人を抱き寄せる。
いつの間にか無表情で、こちらをガン見していたからだ。
「…………にゃ、にゃによっ!」
「…………いいわぁっ!!」
「っ!?」
「いいじゃないのぉ~、その衣装っ! 最っ高だわぁっ! 三人とも凄く素敵じゃないのぉー! よく触、じゃなくて、見たいからわたしもそっち手伝っていいでしょっ――――!!」
『っ!?』
「きゃっ!」
う、うわっ――っ!!
私たち三人を見る目が血走って涎まで出てるよこの人。
完全にロックオンされてるよね、私たちっ!
ユーアは平気そうだけど、メルウは短い悲鳴の後、腕の中で「ブルブル」震えている。
そういう私も鳥肌がたっていた。
こ、怖すぎる。
「ニ、ニスマジは、悪いんにゃけど、カジカさんと、接客と販売の方を、手伝ってくれるかにゃ!」
そう。
冒険者たちと、ニスマジが連れてきた人らの影響で、カジカさんも手が回らなくなっている。そちらにも人手が必要だ。
決して気持ち悪いとか、近くにいて欲しくないとか、そんな理由などない。
「んーもう、わかったわよぉ~、。それじゃ、わたしは接客の方をみてくるわ。後でまたくるからねぇ~」
「う、うん、よろしくねっ!」
よし、これで変○は去った。
そうは言ってもニスマジも立派な戦力になっている。
そして意外と中身は常識人だったりする。
だから無下にもできない。
「ふぅ、ニスマジは見た目あれだけど、任せても大丈夫かな? それよりも助っ人たちはうまくやってるかな?」
私は一息吐き出して、状況把握する為、周りの様子を見てみる。
※※
「お、なんだ、この味噌って奴で焼いた肉、焼き具合もそうだか味噌の味と焦げも相まって、香ばしくてうまいじゃねえか!?」
「この、味噌肉野菜炒めも野菜の甘味と合わさってうまいっ!」
味噌料理に舌鼓を打ち、感嘆の声を上げる冒険者の二人。
そこに、
「お前たちは、味噌が腐ってると思って口にしなかったらしいが、それは大きな間違いなんだぞ」
冒険者二人の感想を聞いて、口を挟む肉担当のログマさん。
「そうよ、わたしたちもルーギルやニスマジ達と冒険者時代に何度も口にしているのよ。体に悪いわけないでしょ?」
近くにいたカジカさんもフォローを入れる。
「ええっ! ログマさんとカジカさんは、昔ルーギルギルド長と組んでいたんですか!?」
それを聞いた冒険者の男は、上ずった声で反応する。
「まあな、昔の話だがルーギルも俺たちも大豆の食品は気に入っている。だから安心して食べろ」
「そうよ、あなた達もルーギルのいう事なら信じられるでしょう?」
「は、はいっ! ギルド長も食べた事があるなら大丈夫ですねっ!」
どうやら、トロノ精肉店の二人は問題なさそうだ。
※
こちらは味噌汁担当の店主のマズナさん。
そして近くにいたニスマジ班。
「あら、このお豆腐も、サッパリして美味しいわぁ! それと、このタレもいいわねぇ!」
「味噌のスープも、優しい味でおいしいかもぉ!」
ガチムキオネェ軍団が、マズナさんに向かって感嘆の声を上げる。
「おうっ! 俺の作った豆腐も味噌も、褒めてくれてありがとよあんた達っ! あと、豆腐にかかってるタレは醤油ってんだっ! それも大豆からできてるんだぜっ!」
二人の会話を聞いていたマズナさんは、すぐさま注釈を入れる。
続いてニスマジも、
「そうよぉー、あんたたち。なんか勘違いして食べてなかったみたいだけど、わたしも好きなのよ大豆を使った食べ物は。美容にも健康にもいいしねぇ」
畳み込むように、追加アピールする。
「ええっ! 美容にも健康にもいいなんてぇしかも美味しいしぃっ!」
「ねぇっ! みんな聞いたぁ――! ニスマジさんのお墨付きよぉ!」
「ソウナノ! あのニスマジさんが言うなら、アンシンダネッ!」
そして、ユーアが声を掛けて集まった、おじちゃん達冒険者30人。
更にニスマジが連れてきたガチムキのオネェ軍団20人が加わって、どの大豆料理にも舌鼓を打ち、その味を絶賛していく。
なんか微妙に説明口調で演技っぽい人もいた気もするが、ニスマジに頼まれたのだろう。
だがそんな大根役者の演技でも、人は多く集まってきている。
「おい、なんだあれ! ネコの格好の少女たちが宙に浮いてるぞっ!?」
「はぁ? 何言ってんだ、おま――へ? 本当だっ!?」
「…………か、可愛い…………ハァハァ」
「大豆だって? 面白そうだからちょっと行ってみようぜっ!」
こちらは街の男性陣。
「見てっ! あの子供たち空中を歩いてるわよっ!?」
「はぁ? 何言ってんの、あな――は? 本当だっ!?」
「…………か、飼いたい…………ハァハァ」
「大豆? 何かしら面白そうだから行ってみようよ」
こちらは街の奥さま方。
「うん」
私たち三人の空中宣伝も、かなり目立っていい感じになっている。
まあ、キャストもいいからねっ。
なんか嫌な視線も感じたけど。
「おーい! この味噌を買いたいんだか誰かいないのか―っ!」
「私は、豆腐と醤油が欲しいんだけど、どこで払えばいいの?」
「俺は、一通り買うぞ――っ!」
そしてその影響で購入者も一気に増えてくる。
これじゃ販売する人数も足りなくなる。
下にいる応援の人たちは、絶えず何かの対応に追われている。
色々な結果が重なって、みんなもいきなり忙しくなる。
「お――い、スミカさんっ! もう持ってきてたうちの商品が足らなくなりそうなんだっ! 俺が取りに行ってもいいかっ?」
人ごみに揉みくちゃにされながら、マズナさんから声が上がる。
「スミカ、こっちも肉とか野菜が諸々足りなくなっている。どうする?」
間髪入れずログマさんからも。
「う――、ログマさん、材料は私が持っているから直ぐに行くにゃ! マズにゃさんの方は、私とメルウが取りに行ってマジックバッグに入れてくるにゃ! あ――それとも……」
それでも微妙に回らないと思う。この人数だと。
「オ――イッ! スミカ嬢ォ! なんか人手が足りなさそうじゃねえかァ!!」
「そうですね。流石にこの人数だと回らなそうですね」
味噌肉の串焼きを両手にそれにガブついているルーギルと、味噌のスープを片手に飲んでいるクレハンの二人が、悩む私に声を掛けてくる。
「ま、まあちょっとだけヤバいにゃ。ちょっとだけにゃ」
見栄を張って、ちょっとだけをアピールする。
あまり弱みを見せたくないからね。
「カァッ! これがちょっとだけかァ? クレハン、ギョウソに言って冒険者の奴らに料理が出来る奴と、勘定をできる奴は手伝ってやれって伝えてくれやァ! それと、ニスマジの奴らも来ていたろォ、そいつにも伝えてくれェ!」
「はい、オーダー承りましたギルド長。では」
ルーギルの注文に、クレハンは一礼して人混みの中に入っていく。
どうやら二人には見透かされていたようだ。
「…………ルーギル、いいの?」
下にいるルーギルに、ネコ耳カチューシャを外してそう問いかける。
何でそこまで?
「クレハンも昨日言ってたろォ! 俺たちは嬢ちゃんたちを気に入ってるんだァ! だから気にするなァ!」
「前にも言ったけど、私たちに期待されても迷惑なんだけど」
「それも昨日言ったろォ? 勝手に期待してんだァ、それこそ気にするなァ!」
「…………うん、わかった。今回は甘えるよ。お願いするルーギル」
正直今はネコの手も借りたい状況なのだ。
まぁ、ネコは自分たちだけど。
「ボクからもお願いするにゃ! ルーギルさん!」
「オウッ! 承ったぜぇ! 嬢ちゃんたち任せろォ! さあ、面白くなるぜぇ!!」
そう言って、ルーギルも人混みの中に消えて行った。
「ふう、それじゃ、そっちはルーギル達に任せて、私たちは出来る事をしようか?」
「はいっ! スミカお姉ちゃんっ!」
「はいにゃのっ!」
「ユーアは一人で上にいるのは嫌でしょう? 一度下に降りて皆を手伝う?」
独りだけ、取り残されるであろうユーアを気遣いそう提案する。
こんな空中でネコ装備。しかも一人。
私だったら悶絶ものだ。恥ずかしくて。
「スミカお姉ちゃんボクは一人でも大丈夫にゃのっ! 任せて欲しいにゃ!」
決意のみなぎった表情で、そう返事を返す。
どうやらユーアの意志は固いようだ。
「そう? だったらお願いにゃユーア。メルウと私は大豆商品の在庫持ってきたら、すぐに合流するからにゃ」
ネコの手袋をはめながら、ユーアの猫耳カチューシャを付けた頭をなでる。
「はいっ! 任せて欲しいにゃ!!」
「うん、それじゃすぐに戻ってくるから、よろしくにゃ」
「うニャッ!!」
タンッ
メルウを抱き上げて、透明壁を展開しながら下に降りる。
「はい、ログマさん。お肉と野菜をここに置いておくにゃ。これで全部にゃ」
まずはログマさんに材料を渡す。
「ああ、すまない。お前たちは昨日大量の買った肉はこれで使い切ったのか?」
「そうにゃんです」
ユーアが選んで、ログマさんから買った肉はこれで最後だ。
「そうか、なら明日以降に取りにくるといい。お前たちの分を仕入れておく」
「ログマさんお願いするのにゃ。それじゃ私は他に行くところがあるから行きますにゃ」
「ああ、大豆商品の在庫を取りに行くのだろう。気を付けて行ってこい」
「はいにゃ」
「ニャニャニャッ!」
ログマさんと別れて、メルウを抱えなおす。
そして透明壁を足場にして屋根の上にでる。
「ねえ、メルウ。倉庫は何処にあるにゃ? 案|にゃい《内》してくれる。遠いの?」
首に抱き着いて、プルプルしているメルウに声を掛ける。
「は、はいニャの! あっちですニャ! ここから歩いて10分くらいですニャの!」
「わかったにゃ。それじゃ、ちょっと急ぐにゃ」
「ニャっ!」
メルウをしっかりと抱きかかえながら、大豆工房◎の倉庫を目指して屋根の上を疾走していった。
登場人物もフルで出てしまって皆に焦点を当てるのに苦労しました。
場面がコロコロ変わって読みづらかったと思います。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!