話を書いていて、どっちが姉か妹かわからなくなります。
二人とも魚の『タナゴ』からもじった名前なので余計ですよね。
※今回もユーア視点のお話になります。
ボクはお薬を使おうと、まだお尻の赤い二人に近付きます。
『あれ?』
お顔がある方に周ったら、二人とも何か小さな声で呟いていました。
何か眠そうな目で、寝言を言ってるようにも聞こえます。
何だろう?
「ああっ! スミカお姉さまっ! お仕置き素敵でしたっ!」
「んんっ! スミカ姉っ! ワタシこんなお仕置き初めてでっ!」
『えええっ! は、早くっお薬使わないとっ』
ボクは慌ててスミカお姉ちゃんから渡されたお薬を使います。
何だか二人が危ない気がしたからです。
「はっ! 私のお尻は大丈夫!?」
「お尻 お尻っ!!」
ナゴタさんとゴナタさんは直ぐに目を覚ましました。
そして急いでお尻を確認していました。
「良かったぁっ! ちゃんと付いてますよ! でも、あれはあれで」
「危ねえ、お尻がなくなったと思ったぞっ! あの刺激は、だんだん」
お尻が治って安心したみたいで、うっとりとしていました。
そんな二人にボクは、恐る恐る声を掛けます。
「あ、あのう、お尻は大丈夫ですか?他にどこか痛くないですか?」
なんて聞いてみます。
まだお顔だけは赤いですが。
「大丈夫ですよ。スミカお姉さまのアイテムを使ったのでしょう?」
「は、はい、そうですっ! スミカお姉ちゃんのですっ!」
「なら大丈夫だぜっ! ワタシたち何回か同じもの使ってもらったから」
「そうですか、それは良かったですっ!」
お尻が治って元気になった二人とお話しができました。
「それと攻撃をした私たちを助けてくれてありがとうございます」
「へ?」
「そうだぜっ! しかも、あのスミカ姉のお仕置きを止めてくれただろう? そして治療もしてくれたし、ありがとうよ」
「ええっ!」
「本当に助かりました。危うく新しい世界に飛び込みそうでしたわ」
「本当に助かったぜっ! あのままだったら違う自分に目覚めそうだった」
「うんっ! うん?」
ニコニコしながら、頭を下げてお礼まで言ってくれました。
最後のはよくわからなかったけど
この人たちはあんまり悪い人たちじゃなかったのかな?
「どう、二人は反省した? それとユーアありがとうね。二人を任せちゃって」
「ス、スミカお姉さまっ!」
「スミカ姉っ!」
髪を乾かしたスミカお姉ちゃんがボクたちの前に来ました。
その後ろには、スミカお姉ちゃんに隠れるように、ルーギルさんとクレハンさんも一緒でした。ケガはもうお薬で治したみたいです。
「あ、スミカお姉ちゃん! あの、この人たちですが、なんか――」
「もう、ユーアを襲っては来なかったでしょう?」
ボクが言いたかった事をわかっていたみたいに聞いてきました。
「はい!とても、その、良い人みたいです……」
ボクはスミカお姉ちゃんに答えました。
「ユーア。前に冒険者ギルドで言ってた、ルーギルたちの話覚えている? この姉妹の悪評やら、逸話みたいなの」
「あの、弱い冒険者たちを、いじめる、みたいな事でしたよね……」
その本人がいるので、小さい声で答えます。
だって言いずらいんだもん。
「そう。だからもうユーアには襲ってこないよ。ね?」
スミカお姉ちゃんはボクじゃなく、スミカお姉ちゃんの前で正座している、ナゴタさんとゴナタさんに聞いているようです。
「その通りですっ! スミカお姉さまっ! ユーアちゃんみたいな強い子なら、私たちも大歓迎ですから」
「うん、ナゴ姉ちゃんの言う通りだっ! そう言えばユーアちゃんって、もうCランクくらいか? 小っちゃいけど強いもんなっ!」
「そ、それってどういう事ですか?」
二人が今までと別の人になっちゃったみたいでした。
それでもまだ少し怖かったけど聞いてみました。
「ほら、もっと簡単にいいなよナゴタ。ユーアがちょっと不思議そうな顔してるでしょう? それとゴナタ。ユーアはまだEランクになったばかりだよっ! えへへっ! 凄いでしょう!」
スミカお姉ちゃんが、ボクとの間に入ってくれました。
何だかちょっと嬉しそうでした。
「えっ! Eランクですかっ!?」
「はぁっ!? その腕前でEランクっ!」
「ああ、その通りだァッ。ナゴタとゴナタ姉妹ッ! ユーアは大体3日前くらいかァ? Eランクに昇格したのはッ」
「そうですねギルド長。そしてスミカさんは3日前にコムケの街で、冒険者になったばかりですねっ!」
ルーギルさんとクレハンさんが、二人に説明してくれました。
「スミカお姉さまが冒険者なのはお聞きしていました。でもユーアちゃんはなったばかりですかっ! あの強さで!?」
「え、ちょっと待ってくれよぉ! ええと、ユーアちゃんはEランクになったばかりで、スミカ姉は冒険者になったばかり…… あれ? スミカ姉はそれじゃFランクなのか? 冒険者になったばかりだから?」
「え、違うよ。私は最初からCランクだよ」
それを聞いて、妹のゴナタさんにそう答えてました。
「えええっ! あ、ありえないですっ! それって初日からCランクって事ですよねっ!? でもさすがお姉さまっ! と、言いたいですけど、そんな事あります!? 初めて聞きましたよっ!」
「おいっ! どうなってるんだ? ルーギルっ!」
二人は、もう何が何だかわからないみたいで、ゴナタさんがルーギルさんに怒ったように尋ねています。
「ああ、それなんだが、あんま大ぴらに言えねえんだがよォ」
少し困った様にルーギルさんは頭を掻いています。
「ギルド長。別に隠さなくてもいいと思いますよ。双子姉妹はスミカさんをこれでもかってくらい認めてるみたいですし、コムケの街に行けば冒険者の殆どは知っていますから」
「ハァ、仕方ねえなァ」と呟きながらルーギルさんは
「俺の独断と偏見と職権乱用で、スミカ嬢をCランクにしたァッ!」
ちょっとやけくそになって大声で叫んでいました。
「ナイスですよルーギルっ! 私が許しましょうっ!」
「ナイスだぜっ! ルーギルっ! お前は正しい事をしたんだぁ!」
それを聞いたナゴタさんとゴナタさんは「グッ」と親指を出して、ルーギルさんに笑顔で向けていました。
「でもよォ、お前たちはある意味、Bランクって言うかァ? 『Fランク』だよなァ? いやもっとかァ?」
「ルーギル。ここにきて、私たち姉妹を馬鹿にしているのですか?」
「何が言いてえんだっルーギル! F以下なんてあるわけねぇっ!」
なぜか、ルーギルさんは続けて不思議な話を言い出しました。
Bランクなのに、Fランクのもっと上?下?
「それに比べて、スミカ嬢とユーアは『Aランク』だよなァ! 絶対に『EやCランク』じゃねえぞォ!」
「はぁ? 一体何言ってんのルーギル?…… ああっ!?」
スミカお姉ちゃんもわからなくて首を傾げていました。
でも最後、何かに気付いたみたいです。
「Aランク? スミカお姉さまなら、そのランクでも余裕ですよっ! はっ!?」
「スミカ姉ならAランクでも足りないぜっ! えっ!?」
ルーギルさんが、スミカお姉ちゃんとボクと、ナゴタさんとゴナタさんを見て、そう言っていましたが、ボクには意味がわかりませんでした。
でも、ボク以外の人たちはわかっているみたいでした。
「ル、ルーギルっ! あなたねえっ!!」
「ちょっとルーギルっ! お前なぁっ!!」
ナゴタさんとゴナタさんは、胸を両手で隠すようにしています。
ちょっとだけお顔が赤いです。
「ギ、ギルド長っ! それはスミカさんには禁句だったのではっ!?」
でもクレハンさんはかなり焦ってた感じでした。
そしてその正面では
「ギ、ギザマ、ルーギルッ!! マダジテモッ!!」
低くて恐い声を出したスミカお姉ちゃんがいました。
それは全身から黒く何かが出ているように見えました。
『あれ? このスミカお姉ちゃんって?』
ボクは思い出そうとちょっと考えてみます。
『あ、そうだっ!』
今のスミカお姉ちゃんは、冒険者登録の時に、お胸の大きさの事でルーギルさんに怒ってた時のスミカお姉ちゃんだ。
そう思い出したボクは、ルーギルさんに「ダメだよっ」
と言おうとしたんだけど。
ドゴォ――ンッッ
「がはぁッ――!!」
凄い音と声で飛んで行って、遠くで気を失ってしまいました。
少し遅かったです。ゴメンなさい、ルーギルさん。
『でも、ボクの知ってるスミカお姉ちゃんは、お胸の大きさなんて関係ないくらいに、カッコよくてキレイなのに、なんでそんなに気にするんだろう? ボクも大人になったら気にするのかなぁ?』
全く膨らむ様子のないお胸をペタペタと触ってみます。
でも
『ボクは、スミカお姉ちゃんくらいがいいなっ!』
憧れのスミカお姉ちゃんのお胸を見て、そう思いました。
Fランク以上……双子姉妹恐るべしですね。
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