おかしい……
トロールはもう目の前なのに辿り着けません。
ただの女子会です……
気長に読んで頂けるとありがたいです。
「よし、そろそろだね? 二人ともスピードを落とそう」
索敵でトロールらしい集団がいる場所を確認して姉妹に告げる。
「はい、わかりました。スミカお姉さま」
「おう、わかったぞっ! スミカ姉っ!」
早歩き並みの速度までスピードを落とす。
見た感じこの先300メートルほど先に12個の大きなマーカーがある。
ただその内の3つは群れの中から外れているようだ。
見張りか何かだろうか?
「ねえ、この先って何があるの?」
この先のMAP情報がないので、姉妹にその場所の詳細を聞いてみる。
こういう時GPS機能なんか欲しくなる。マッピングしなくて済むし。
そもそもこの世界に衛星自体がないんだから、絶対に不可能なんだけど。
「この先は森を抜けた先にちょっと大きな洞窟があるんだよっ! トロールも入れるぐらいのさっ!」
妹のゴナタが答えてくれる。
やはり何度か来たことがあるんだろう。
聞いてみて正解だった。
「うん、ありがとうゴナタ。助かるよ」
教えてくれたゴナタにお礼を言う。
「えへへっ。何でも聞いてくれよっ!スミカ姉っ! ワタシがわかることは全部教えるからさっ!」
ちょっと照れてようにカリカリと指で頬を掻いて教えてくれる。
「うふふっ、ゴナちゃんったらなんか嬉しそうね。スミカお姉さまに褒められて」
それを見た姉のナゴタが微笑んで声を掛ける。
「そ、そんなことないよナゴ姉ちゃんっ! ワタシはスミカ姉に聞かれて普通に答えただけだからっ! 別にお礼を言われたからって舞い上がってなんかないからっ! ホントだよっ!?」
ナゴタの言葉にゴナタが余計にあわあわし出した。
これまでの事を考えると、余りお礼を言われ慣れてないんだろう。
今までは中々ハードな生き方だった姉妹だし。
「あ、そうだっ! トロールのとこに着く前にちょっと小休止もかねて作戦会議しようか?」
二人にそう提案する。
「はい、スミカお姉さまがそうおっしゃるなら」
「うん、ワタシもそれでいいぞっ!」
「それじゃ、こっちで、少し休もうか」
二人にそう言って、若干草木が薄いところを見つけて先を歩く。
「ここならいいかな?」
短い草ばかりの平坦な場所を見付けた。
なので、そこにアイテムボックスより4人掛けテーブルセットを出す。
「…………………」
「…………………」
「それじゃこれに座って。飲み物と軽食を出すから」
なぜか突っ立ったままの二人に声を掛ける。
「あっ、は、はい」
「う、うんっ!」
「?」
二人の前にステョックタイプレーションとドリンクレーションを出す。
一応戦い前だから、体力は万全に期してと思ったからだ。
「…………な、なんですか、これは?」
「…………………??」
二人は私に出されたものを手に取って、不思議そうに見ている。
「ああ、それはちょっとしたお菓子と、飲み物だよ」
簡単に説明する。
因みに今回のスティックタイプのレーションは、全てピザ味の物だ。
ドリンクレーションは甘いもの(黒糖味)にしたからだ。
さすがに両方とも甘いものだったら、飽きちゃうからね。
「いろんな国を見てきましたが、これは見たことないですね………… こ、これって――――」
「おお、なんか甘くておいしいぞっ! あ、あれ、体が? ――――」
二人はそれぞれドリンクレーションを口に含んで動きを止める。
そして今度はおもむろに、ステョックタイプにも手を出している。
「ス、スミカお姉さまっ! なんですかこれっ! ものすごく美味しいのに体力を大幅に回復するなんて…… こ、こんな、高級なものいいんですかっ! 私たちに配ってしまってっ!」
「何これ美味しいぞっ! 甘くて香ばしくて両方とも美味しいよっ! しかも完全回復だっ! ス、スミカ姉っ! こんなものワタシたちにいいのかいっ? これ、すごくいいもんだろうっ?」
二人は初めて試食したノコアシ商店のニスマジ並みに驚いている。
ニスマジも最初こんなだった。顔を赤くして異常に興奮した感じだったもん。
あれは怖かった……。
まぁ、この姉妹がやるとなんかちょっと色っぽく見えない事もないけど。
「別にいいよ。その為に出したんだから遠慮しないで大丈夫だよ」
「さ、さすがスミカお姉さまですねっ! こんなすごいアイテムを何気なく出してくれるなんてっ! それに収納魔法からお茶会みたいなテーブルセットを出した人も私は見た事ありませんよっ!」
「う、うんっ! うんっ!」
姉のナゴタは感心したって言うか、キラキラした目で私を見ている。
妹のナゴタはそれを聞いて「ブンブン」と頷いてるだけだった。
「そんなに気にいったんなら、二人にもある程度渡しておくよ。持ってても困るわけではないでしょ?」
そう言って、私は二人の前に適当な数をバラバラ出していく。
ついでにリカバリーポーションも数本出しておく。
「こ、こんなに大量に? こんな物まで私たちに? スミカお姉さまっ!」
「ス、スミカ姉っ! これってあの回復薬かい? それをこんなにっ!」
「ん?」
あれっ? 驚いてるようで、なんかしんみりしていない?
違う、どっちかっていうと感動かな? 二人とも。
そんなに嬉しかったのかな?
私としては必要だからと思って上げたんだけど。
必要ってのは、このアイテムの話じゃなく
この姉妹の存在がっていう意味なんだけど。
「スミカお姉さま」
「スミカ姉」
「どうしたの? 遠慮しないで貰っていいからね。まだ大量に持っているから」
中々アイテムに手を出さない姉妹を見かねて声を掛ける。
そんなナゴタとゴナタの姉妹は、椅子の上のまま佇まいを正す。
そして……
「スミカお姉さま、私、ナゴタは――――」
「スミカ姉、ワタシ、ゴナタは――――」
「「盾となり矛となり、あらゆる障害の全てから、あなたを守ると誓いますっ!!」」
そのまま二人はテーブルに額を付け、深々と頭を下げてそう言ってきた。
「は、はぁっ!?」
なんでそうなるのっ!? いちいち大げさ過ぎるでしょう?
それってプロポーズにも聞こえるけど違うよね?
そうじゃないよね?
私はこれからの事を考えてアイテムを渡しただけだよっ!
何かある度にいちいち渡すのもあれだからっ、とも思ってさっ!
この姉妹って人に親切にされることに慣れていなさ過ぎなんだよ。
「……………………」
「……………………」
「……………………」
『何で急に黙り込むの? こ、これってなんか答えなきゃいけない流れなの? この問答って最初会った時にも似たような事あったよね? ――――』
「ジ――――」
「じ――――」
「~~~~ううっ」
これって絶対に私からの一言を待ってる目だよ。
二人とも頭を下げながら上目遣いでこっちを見ているよ。
「あのさ、そんなに畏まらなくてもさ、もっと気楽に行こうよっ! ねっ?」
「ジ――――」
「じ――――」
「くぅ~~~!!」
だ、だめだ、なんでか逃げられないっ。
だったらっ!
「ご、ごめんね、二人とも。私にはもう心に決めた人がいるんだ…… だから、二人の気持ちには答えられないんだ。――――」
二人の男性に告白されるが「もう好きな人がいるから」って理由を付けて、やんわり断るモテ女子を演じてみた。
「え、ええ。別にそれでもいいですよっ! スミカお姉さまっ!」
「うん、ワタシもスミカ姉に別に好きな人がいても全然平気だしっ!」
そう言って姉妹とも何でもないようにそう答える。
『…………なんか全然堪えてない』
さっきのはもの凄く重く聞こえたけど実際はそうじゃなかったのかな?
盾やら矛とやらの話は…………
『まぁ、いいか? 何かあればその都度話すればいいし』
もう面倒臭くなってこの話は無理やり自分の中で終わりにした。
「二人とも。少し顔が汚れているからこれで拭きなよ。汗も冷えるといけないからさ」
ちょっと気になって、二人にタオルを出して渡してあげる。
私との戦闘のせいか、ここまでの旅のせいか、姉妹は若干汚れていた。
「はいっ! スミカお姉さまっ! 何から何まで気を使っていただきありがとうございますっ!」
「ありがとうっ! スミカ姉っ!」
二人は受け取って顔や首筋などを拭っていく。
「あれ? これは何ですか?」
「うん、違う布も混ざってるけど?」
姉妹がそれぞれのタオル以外にもう一枚ずつこちらに渡してくる。
「あ、それは?…… ごめんごめん。新しいのと使ったものが混ざっていたんだね」
そう謝ってそのタオルを受け取って見てみる。
『……ああ、これはユーアを拭いたのに使ったやつだ。なんだろう? アイテムボックスの中で絡まって出てきたのかな?』
なんて思いながら、そのタオルを思いっ切り顔に当てる。
そして残っているであろう、その匂いを吸い込んでみる。
『うん、やっぱりユーアの香りがするねっ! このほのかに甘いベビーパウダーみたいな匂い――――』
その使用済みタオルで、掻いてもいない汗や汚れてもいない顔と首筋を拭いていく。
『……なんだろう? なんかユーアに抱き着かれてる気分になってきた』
なんて独り、ユーアの温もりを感じていると――――
「えっ!?」
もの凄いスピードでこっちに移動しているマーカを見付ける。
『これって、トロールの大きさじゃないね』
相変わらずトロールのマーカーはこの先の地域に集まっている。
その他にも動いているマーカーは確認していたが、小動物だろうと気にしていなかった。トロールから逃れ続けている生物だろうと。
『……魔物か敵かわからないけど、正確にこっちに向かってきているね』
その索敵に映し出されている謎のマーカーは、かなりのスピードで一直線にこちらに向かってきている。
「二人ともなんか来るよっ! 一応警戒しておいてっ!」
すぐさま姉妹にもそう伝える。
「はいっ! スミカお姉さまっ!」
「何があっても、ワタシたちの任せてくれっ!」
それを聞いた二人は即座に立ち上がり、各々の武器を出して身構える。
『う~ん、できれば倒したくないんだよね? ただでさえトロールせいで数が減って森の生態が変わってきているのに…… なら敵意があれば問答無用で倒す事にしよう。その時は襲ってきた相手が悪いし』
高速で迫ってくる謎の存在になんとなくそう思った。
別に澄香は匂いフェチではないです。
ユーアの臭いが好きなだけです。クンカクンカ。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!