……そのときの空は、胸が痛くなる程に綺麗な茜色をしていた。
目を背けたくなるようで、けれどその赤から目を離せなくなる、そんな空の色。
一つの終わりを感じさせるような、緩やかに沈んでいく色。
……荒い息遣い。それは、俺と彼女のもの。
疲れきった体を寄り添わせて、俺たちは木の幹に背を預けていた。
彼女は眠っている。それまでの全てを、せめて今一度だけでも忘れようと。
そして俺も、ほんの少しくらいなら……。
――つがいのトキを目にした恋人たちは、必ず結ばれる。
そんな言い伝えが、この村にはあった。
鴇村と名がついたこの小さな村で、ずっと昔から語り継がれてきた不思議な伝承。
その伝承に、何の根拠もあるわけではないけれど。
あの日見た光景だけは、いつまでも信じていたい。
あの日刻んだ言葉だけは、いつまでも信じていたい。
その思いは、俺も彼女も、同じであるはずだ。
だから……俺たちはきっと。
……真っ赤な空に飛び立っていくトキたちを見つめながら、俺は思う。
いつまでも、
いつまでも、共に生きていこう、と。
……ツバサ。
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