いつか魔王になろう

Red R
Red

エピローグから始まるプロローグ

公開日時: 2020年9月7日(月) 16:27
文字数:851

「仲間になるなら、世界の半分をやろう」


目の前の「勇者」を自称する人物に問いかける。

我ながらテンプレセリフだと思うが仕方がないのだ。これは必須であり譲れない。

「魔王になったら言ってみたいセリフ」No.1なのだから仕方がない。俺だけでなく、みんなそう思っているはずだ。目の前にいる「自称勇者」だってそう思っているに違いない。

そうだろ?と俺の隣にいる「元聖女」に視線で問いかけてみる。


「はぁ……。何が言いたいのか、わかりますが……わかりたくもなかったですけど…目の前の勇者様に失礼ですよ。ちゃんと話を聞いてあげてください。」


「いや、だってあいつのセリフ、イタいじゃん?」


そう、目の前の「自称勇者」はさっきから「父の仇」だの「魔王を討伐して世界を救う」だのと言っている。

もう何回同じセリフを聞いたことか。それだけならまだしも「我が秘剣、滅魔昇竜破を受けてみよ」だの「お前の攻撃は効かない。スキル絶対反転防御があるからな!」だのと聞いているだけで胸が痛くなってくる。

ある意味、これ以上はないぐらいのクリティカル攻撃だよ。

大体「滅魔昇竜破」って何よ?どこから竜が出てきたの?しかも「竜」だよ?「龍」じゃない時点でダメっぽくない?後「剣」はどこ行ったの?


「まぁ、それはそうなんですが……でもあなたもやっていたでしょ、レイ……ううん、彼方センパイ」

途中から、口調を変える「元聖女」……水上香奈美が昔と変わらない表情で笑っている。


俺は彼女のこの笑顔を見るためにここにいる。彼女を見ていると心からそう思う。そしてその笑顔を守るために「魔王」をやっている。


目の前では「自称勇者」が「聞いているのか魔王!」などと叫んでいるが、もちろん聞いていない。


ちょっとうるさいので「沈黙《サイレス》」の魔法と「拘束《リストリー》」の結界を張る。

これで、奴は動けないし、何を言っても声は出ないので少しは静かになるだろう。

目の前で何か叫んでいる「自称勇者」を一瞥した後、なぜこんなことになっているのかを考えてみる。


……ホントなんでこうなった?


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