「おはようございまーす」
自分の所属する部署に入り軽く会釈をしながら挨拶をする。
間延びしたやる気のなさそうな挨拶がパラパラと返ってくるのを聞きながら自分のデスクへと向かう。
ふと、デスク上のPCに付箋がしてあるのに気づく。
『先方へ送るデザイン案、3パターン程増やして送ってください。本日中で』
思わず座りながらため息が漏れる。
隣のデスクには、入社当時私の教育係をしてくれた美山実さんがもう仕事を始めていた。
「美山さーん・・・、どう思います??」
不機嫌を全面に見せながら体を美山さんに傾けながら付箋を見せる。
すると美山さんは作業の手を止めて付箋を手にした。
「あー、また課長のムチャぶりー?」
「みたいですぅー」
「不貞腐れんなよ」
そう言うと軽く笑いながら私を小突く。
大袈裟に仰け反りなおも不貞腐れている私に美山さんは続ける。
「でもこれ、昨日課長に見せてOK貰ってたよね?結構苦戦してなかった?」
「そうなんですよー・・・、この案件課長関係ないのに口だけ出してきて・・・」
口だけ、を強めに言うとちょうど課長が出社してくる。
小声で「やべ」と呟いて、続けて「おはようございまーす」と言いながら椅子をデスクの前に戻す。
同じく「おはようございまーす」と言った美山さんは小声でこちらに
「ま、本当にヤバそうだったら手伝える案件こっち回しな。元教育係だしね、手伝ってやるよ」
と言うと仕事に戻っていった。
少し情けなく「ありがとうございますぅ・・・」と答えると私も仕事の準備に取り掛かる。
あーあ、私がゲームと同じステータスなら今すぐ課長をグッチョングッチョンのギッタンギッタンにしてやるのに!!
頭の中で課長をあられもない状態にすると少しスッキリした。
というか、課長が今出勤してきたということは、この付箋を置いたのは昨日私が帰ってからということになる。
しかし昨日は、課長は接待だと言って早く退社したはずだ。
1度会社に戻ってきたのか・・・?
そこまで考えたところでももう1度大きなため息が漏れる。
それもそのはず。
昨日は、今回の企画のリーダーにOKを貰えば課長からNGが出て、課長にOKを貰えばリーダーからNGが出て、本当に大変だったのだ。
あの作業をまたやらなくてはいけないのかと思うと、ため息のひとつもしたくなるというものだ。
昨日は帰ったあとゲームにログインできなかったからな・・・、今日は昨日の分までゲームがしたい。
一昨日変えたばかりのネイルを眺めて、心の中で自分に鼓舞を入れた。
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