時刻は11時30分
もう少しでお昼休憩の時間だが、まだ課長のOKが出ていない。
課長のOKが出たら今度はリーダーにOKをもらいに行かなければいけないのに・・・。
2人を納得させるのは本当に大変、だからこそお昼前には終わらせたかった。
もう既に3度もリテイクをくらっていて、心が折れかかっている。
次こそ課長のOKが出るといいんだが・・・。
「何やってるんだ?」
後ろから突然声をかけられて、私は思わずヒッと声を上げる。
すぐ後ろを振り返ると、今回の企画のリーダーである岡井拓也が覗き込むように立っていた。
「それ、昨日OK出したよな?」
作業中のPCを指差しながら岡井リーダーはそう尋ねる。
「あー・・・、課長からプラスで3案ほど出せと言われまして・・・
課長からOK頂きましたら、岡井リーダーに報告に行こうと思ってたのですが・・・」
おずおずとそう告げると、岡井リーダーはゆっくりと課長の方を向き「ほぅ・・・」と告げると去っていった。
向かったのは課長のデスクだ。
何か今回のムチャぶりに意見してくれるのだろうか、まぁ期待しすぎない程度に期待しておこう。
そう思うと、またリテイク作業を続ける。
10分程過ぎただろうか、突然課長の怒鳴り声が聞こえる。
「これだから最近の若いもんは!!
年上の言うことは有難く聞いとくべきなんだ!!どうなっても知らんぞ!!勝手にしろ!!」
怒鳴り声を聞き反射的に課長の方を向くと、課長はデスクのコーヒーをグイッと一気に飲み干し、部屋から出ていってしまった。
まさか、岡井リーダー本当に課長に意見をしてくれたのだろうか?
私はポカンとしながら、今しがた課長が出ていったドアを眺めていると、後ろから岡井リーダーが声をかける。
「情けねぇ顔しやがって・・・、聞いてたろ?
今やってる作業はもういい、ほかの仕事溜まってるんだろ?」
「え?あ、ありがとうございます・・・」
「ありがとうじゃねぇだろ、ムチャ言われたらムリですってガツンと言っていいんだよ」
そう言いながら丸めた資料で頭をポンとされる。
ガツンと言いたいのは山々だが、言えたらこんなに苦労していない。
「そうですね、次からガツン!と言ってやります」
なんて、軽く笑いながら返すと
「それでいい」
と笑いながら岡井リーダーは部屋を出ていく。
突然怒鳴り声が聞こえてきた時は本当にビックリしたが、これで今日やるはずの仕事にやっと取り掛かれる。
午前中を無駄にしてしまったが、今から頑張れば今日こそ定時で上がれるかも!
最近は帰りが遅くて、ゲームにログインしてもデイリークエストを消化するだけだったから、今日はストーリー進めちゃおうかな!
気分が上がった私は、お昼休憩も早めに切り上げて気合を入れて仕事に取り組むことにした。
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