「─────ふぅ……………やっと届いたよ…………」
ここは、都内某所の一軒家。
その家のとある一室で、机の上に置かれた段ボール箱を眺めるのは──────
「まさか、サービス開始日に届くとか、予想外すぎるよ………………」
高い声の少女──────いや、少年であった。
彼の名前は一野瀬秋人。少女の如き美貌を持つロリ少年である。
「まあアカウントは準備してあるし、ゲームの方の初期設定も終わってるから、あとはコッチのギアの方だけだから良いけどさ」
そう言った彼女………彼は、段ボールに貼ってあった宛先のところをペリペリとはがす。もちろん住所を隠すコロコロも忘れない。
そして、机の上にあったハサミで箱の口を止めてあったガムテープを切り、段ボールを開ける。
中に入っていたのは、自身の頭よりは少し大きいであろう横長の箱であった。
彼は、その箱の口を止めてあったテープをハサミで切り、箱を開ける。彼が中から取りだした物は、
「これが…………………」
ヘルメットのような形をした機械や黒い箱形の機械やケーブル類であった。
“ソレ”を取りだした彼は、“ソレ”を頭にかぶり、箱形の筐体を取り出して床に置き、そこについていたプラグをコンセントに差し込み、箱の中に入っていたケーブルで“ソレ”と筐体を繋げる。
すると、ヘッドギアからヴォォン、と言う低い音が鳴り、自分から見えない位置のインジケータの二つ、緑色のランプ二つが点灯し、青いランプが明滅を始める。
────────彼は、その見た目から、女男、と呼ばれていた。
学校で男らしい学校をすれば、「やーい女男!」だの、「女が写るだろ」などと言われてきた。
それには、本人の性格も関わっていた。
彼自身、かわいい物が好きであった。
可愛い服や人形、ぬいぐるみが部屋の中にたくさん置いてあった。
それはまるで女子のように、だ。
このように、自分の性格も女子らしいことから、いじめっ子の言葉には反論も否定もできなかった。
─────そんな時だった。彼がこのゲームと出会ったのは。
『この世界では、性別も見た目も自由に変えられる』
ネットのニュースサイトを見ていて、そんな記事を見つけたとき、彼はどんな顔をしていたのか。
彼は歓喜した。
これでようやく、自分を隠さずにいられる場所ができる、と。
彼は元々、女性らしい性格をしていた。
普段は男としての自分を演じているが、気を抜くと女の子のようなかわいらしい言葉遣いになる。
つまり、この世界であれば、自分は“女の子”であれると。
自分が女男と呼ばれることもないと。
そう思った彼は、自身の両親に相談した。
彼は元々ほとんどなにかを欲しがることがない。
そんな彼の口から『何かが欲しい』と言われたのだ。彼の両親は喜んで彼の欲しがった“ソレ”を取り寄せた。
……………取り寄せたというか、一野瀬家の特殊なコネを使って知り合いの社長から譲って貰ったらしいが。
(これでようやく、オレ………ううん、ボクがボクであれるようになる)
彼はベッドに横になり、目を瞑った。
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