ボク、女の子に生まれ変わったけど、元気です!

退会したユーザー ?
退会したユーザー

第二十六話 九月二十日(火) ヤマト街、再び ―前編―

公開日時: 2022年8月19日(金) 21:01
文字数:1,721

 学校から帰宅すると、お父さんとおじいちゃんが、チェスっぽい遊び……ボクは脳内でチェスって呼んじゃうけど、それで対戦してました。


「ただいまー。どっちが優勢?」


「難しいところだね。でも、もう終わりだな。アユムを待ってたんだ。ヤマト街へ行こうじゃないか」


 チェス盤を片付けながら、お父さんが言う。


「ボクは構わないけど、シャワー浴びて着替える時間ぐらいはちょうだいね」


「私も行くー! おねーちゃんと一緒がいいー!」


 すると、漫画を読んでたハーちゃんが、話に入ってきました。


「あらあら。こないだまで、あんなにツンケンしてたのに」


「う~……色々あったの!」


 お母さんが突っ込むと、顔を真っ赤にして、そっぽを向くハーちゃん。かわいいなあ。


「うふふ。とりあえず、また仲良くなったようで、良かったわ」


 お母さん、昨日一緒に寝てるボクたちを見て、色々察したんだろうな。


「じゃあ、俺、親父、アユム、ハーちゃんの四人で行くか」


「バーシも誘っていい?」


「ん、じゃあ出掛けに、声をかけよう」


 というわけで、体と服をピカピカにしたら、四人でお隣へ。


「はーい……あら、おじさんたち、こんにちはー」


 部屋着でくつろいでいたらしいバーシが、裏口を開けて応対。


「ボクら、ヤマト街行くんだけど、バーシもどう?」


「え、行きたい! 五分待てる!?」


「急がなくていいよー。じゃあ、終わったら、うちに声かけて」


 「ほーい」と言いながら、彼女は再び屋内に消えていきました。


 ダイニングで適当に過ごしていると、呼び鈴が。


「お待たせしましたー」


 急いで着替えたのであろう、息を切らしつつ、ちょっとよれた服を直しながら、バーシが裏口に立っていました。


「急がなくていいって言ったのに」


「じゃあ、バーシムレちゃんも来たことだし、車出そうか」


 お父さんが、立ち上がる。というわけで、お出かけタイム! 早く湯豆腐食べた~い!



 ◆ ◆ ◆



「ねえ、アユム」


 道中、バーシが不意に話しかけてくる。


「なーに?」


「ハーちゃん、反抗期って言ってなかった?」


 そこには、後部座席の真ん中に座り、ボクの腕に、にこにこと絡みつく、最愛の妹の姿が。


「あー。まあ、色々あったんだよ。うん」


 ハーちゃんの名誉のために、昨日の出来事は伏せておこう。


「まあ、また姉妹仲良くなったんなら、なによりだけどね。ふう~、爽やか~」


 肩をすくめ、窓を開けて風を感じるバーシ。


「次、交差点を右」


 地図を広げて、運転中のお父さんに指示出しするおじいちゃん。カーナビがないって、不便だねえ。


 ともかくも、こんな調子で一路ヤマト街を目指すのでした。



 ◆ ◆ ◆



「着いたよ」


 お父さんが、車を駐車場に停める。ぞろぞろと車を降りる、ボクたち。


 ちなみに、車はピックアップトラックとかいうタイプ。いろいろ、荷台に積めそうだね。


 それにしても、三日ぶりなのに、何か懐かしいな。前世の記憶が、そう思わせるのだろうか。


「とりあえず、さっそく乾物が見たいんだが、案内してくれるかい?」


「あ、うん。えっとねー。確か、こっち」


 おじいちゃんに促され、てくてくと街巡り。


「いらっしゃーい。おや、あの時のお嬢ちゃんたち……と、そのご家族さんかな?」


「はい。おじいちゃんたちに、ヤマトの食材を紹介したら、もう、興味津々で。あ、おじいちゃんもお父さんも、料理人なんです」


「へえ~。じゃあ、張り切って商品を紹介しなきゃねえ!」


 というわけで、おじいちゃんとお父さんが、店長さんを質問攻め。血が騒いでしょうがないんだね。


 ボクらは、呑気に店内見学。干した椎茸とか、煮干しなんかが並べられている。


「アユム。これ、なんだかわかる?」


「うん。干し椎茸。水で戻すとね、これも、いいダシが出るんだ」


 ボクはボクで、下手に前世知識があるものだから、質問攻めにされてしまう。


 ボクも、早死にしちゃったから、そこまで博学でもないんだけどな。


「で、こっちの干し椎茸がですね」


 おっと、店長さんたち、こっち来ちゃった。邪魔にならないように、入れ替わりに昆布とかのコーナーに移動する。


 そんなこんなで、結構な量の乾物を買い込み、一度後部座席にしまう。


「ねえねえ! 次は、お茶とお菓子にしよ! 美味しいんだよ~」


 おじいちゃんの袖を、くいくいと引っ張る。


 次は、二度目の和菓子攻略だ!

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート