ボク、女の子に生まれ変わったけど、元気です!

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第十五話 九月十一日(日) ナイススタイリスト、バーシムレ先生!

公開日時: 2022年8月8日(月) 21:01
文字数:1,688

 さてさて。歯も磨き終わったし、お隣さんに行きまっしょー。


「こんにちは~」


「こんにちは。いらっしゃい、アユムちゃん」


 おばさんにご挨拶。


 三人は……と。いたいた。


「ククは、今のラフスタイル似合ってるよ。うちには置いてないけど、ミリタリーっぽいのとかも似合うと思うな」


「おお。そういう、かっこいい系の、好きだぜ」


「やあ、やってますねえ、皆さん」


 輪にひょっこり入ると、みんなから「待ってたよー」と嬉しい言葉をもらう。


「クク、確かにミリタリー似合いそうだよね」


「うんうん。良ければ、取り寄せようか?」


「そうだなー。かーちゃんと相談してみる」


 まあ、服もボクら中学生には、高い買い物だからね。


「うちは、どんなのが合うっすかね?」


「シャロンのお母さんは、ああいうフェミニンなのばかり選ぶの?」


「っす」


 「うーん」と唸り、考え込むバーシ。


「フェミニン、似合ってないわけじゃないけど、シャロンってもっと、自由人なイメージあるのよね。とりあえず、カジュアルから試してみようか」


 ハンガーをかき分け、品定めしていく我らが先生。


「とりあえず、これどう?」


 黒い文字がプリントされた黄の長袖に、薄青のショートパンツと黒のニーソックスを当てる。


「どう? 二人の意見も聞きたい」


「うーん。悪くないと思うよ?」


 悪くはない。でも、なーんか一味足りない。


「あたし的には、ちょっとシャロンのイメージとは違う気もするな。フェミニンを見慣れすぎたせいかもしんねーけど」


「っすね。選んでもらって悪いっすけど、なんか違う感がするっす」


 再び考え込む、バーシ先生。


「いっそ、これで攻めてみる?」


 先生が選んだのは、パンクルック。チョーカーの棘が、実にシゲキ的!


「ぶははは! いや、これはこれで、ぶっ飛び過ぎだって!」


 大爆笑する凸凹コンビ。ボクも、つられて笑いそうだよ。


「あー、すまないっす。選んでもらったのに」


「大丈夫。私も、半分冗談で当ててみただけだから」


「ていうか、この店、こんな派手なのもあったんだね」


 バーシも冗談だったとわかり、我慢をやめて、くすくす笑う。


「まーね。お母さんが、気まぐれで仕入れちゃったのよ」


 というわけで、次の品定めにいくバーシ先生だけれども。


「あ、そうだ。シャロン猫飼ってたよね」


 と言って、黒い猫のシルエットが描かれた、左肩の出るピンクの長袖に、黒のタンクトップ、薄青のアンクルスキニーデニムを合わせる。


「ボトムに、ケミカルとダメージ入れたら、かなりイケてると思うんだけど、どうかな?」


「へー。その組み合わせ、面白いっすねえ」


「面白いね。ダメージってあたりに、シャロンの自由さが出てるわ」


「ボクも、それいいと思う」


 満場一致で好感触!


「じゃあ、これも姉さんと同じく、ママに相談っすね」


 シャロンのお母さんって、ちょっとおカタそうな印象だけど、娘の好みを尊重してくれるかな?


「さーて、ラストは、アユムちゃんですよ~」


 手をわきわきさせて、にじり寄ってくるバーシ。


「何、その構えー。普通にやってー」


「ほいほい。で、例によって、ユニセクシャル一点張り?」


「だね」


 どうもフェミニンなのは、ボクの脳にあたっちゃった、「男の子パッチ」が拒むんだよね。かといって、ククみたいなのは似合わないと思うし。


 というわけで、バーシ先生が取り出したのは、パーカー付きの赤い長袖に、黄の半袖。ボトムは、薄青の膝丈ハーフパンツ。


「おお、さすが付き合いが長いと、好みを当てるのも一発だね!」


「ふふん。ダテにアユムちゃんの親友、十年以上やってませんもの」


 ふんぞり返り、エッヘンと鼻の下をこする先生。調子乗りすぎ。内心苦笑する。


「じゃあ、アユムのとシャロンのは取り置いておくから、買えるようなら買いに来て。ダメそうなら連絡ちょうだい。ククは……陸海空軍だったら、どれがいい?」


「やっぱ空軍かな? 戦闘機乗りってカッケーし」


了解ラジャー! じゃあ、仕入れたら電話なり、学校なりで話すからね」


 というわけで、ボクらの新しい服をバーシムレ先生が見事に見立て、あとは我が家で雑談。


 あ、そうそう。ボクの服は、さっそく買ってもらえることになりました。ありがとー、お父さん、お母さん!

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