ボク、女の子に生まれ変わったけど、元気です!

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第二十四話 九月十九日(月) ヘアスタイル談義

公開日時: 2022年8月17日(水) 21:01
文字数:1,564

「ねー、アユムー」


「なーにー?」


 昼休み、教会の清掃が終わったら、次は何のボランティアを提案しようかと、ぼーっと考えていると、バーシがボクの髪を手ですきながら、呼びかけてきた。


 バーシは、こうやってボクの髪を触るのが好きみたいで、しょっちゅうこんなスキンシップをされている。


「やっぱさー、髪伸ばす気ないよねえ?」


「うん」


「もったいないなー。こんなにつやつやで、手触りいいのに」


 ため息を吐く、幼馴染み。幸せが逃げますよー?


「ボクが、ギャン泣きしてまで切ったの、知ってるでしょー?」


 ボクは、前世の記憶が戻る前、長髪だった。ただ、記憶が戻ったらどうにも長髪に抵抗感が出て、「今すぐ切りたい!」と大泣きして、家族を困らせたらしい。


 で、以降ずーっとショートヘアというわけ。


「バーシこそ、伸ばしたらいいじゃない。バーシも、いい髪質なんだしさ」


「あははー。だって、楽なんだもん。アユムの真似して切ったら、頭が軽いわ、お風呂が楽だわ、『私、何のために伸ばしてたの!?』ってなっちゃってー」


「もー。そう思うなら、ボクの意思の再確認とか必要ないでしょー。ボクだって、同じだよ」


 ため息を吐く。ボクも、幸せが逃げちゃうな。


「なんか、変な空気醸し出してんね。何の話?」


 おっと、ククがシャロンと一緒にこっちにやってきた。


「まあ、他愛ない話なんだけど……」


 先程のやり取りと、過去バナを話して聞かせる。


「へー。やっぱ、男の子ってロング嫌なん? たまに、ロン毛のにーちゃんいるけど」


「前世のボクは、そうだったみたい」


「そっかー」


 どうでもいいけどバーシ、いつまで髪すいてんの?


「そういや、この四人でロングなの、あたしだけだな」


「そっすね。いっそ、姉さんもジョキンといって、うちらの仲間入りしてみるっすか?」


「えー? そりゃ、手間かかるし重いけどさ、やっぱ愛着があんのよ、愛着」


 見事に切りそろえられた、ロングの毛先を、くりくりといじり回すクク。


「まー、男子はロングのほうが好みってのが、多いらしいっすからねー」


「あたしゃ、別にモテ願望とかねーけどなー」


「そっすよね。姉さんには、うちがいるっすもんね」


 腕組みして、しなだれかかるシャロン。


「はっはっはっ。サッカーチームできるぐらい、二人で子供作るかー」


 そう言って、カラカラ笑う姉貴分。この世界、同性で子供を作る方法はないけどね。前世だと、なんとか細胞とかいうので可能らしいけど。


 ちなみに、この世界にもサッカーみたいなスポーツがあって、ボクはそれを勝手にサッカーと脳内翻訳している。


「いいっすねー。産みましょ、産みましょ」


 妹分も、笑いながら更にしなだれかかるけど……なんだろう。どこか寂しそうなのは、気のせい?


「ふーん……」


 バーシが、興味深げな声を出す。


「何?」


「ヒミツ」


 ? なんなんだろう、ほんとに。


「そういえば、シャロンがショート派になったのは?」


 一人だけ、髪型のコダワリが謎だったので、訊いてみる。


「バーシと同じ理由っす。やっぱ、楽っすから。でも、姉さんとおそろいにしたら、ほんとの姉妹みたいでいいっすかねー?」


 流し目をしながら、くりくりと毛先をいじりつつ言う。なんか、妙に色っぽいな。


「髪型姉妹かー。そしたら、私とアユムも姉妹だねー。私のほうが、少しお姉ちゃんか」


 髪をすくのをやめ、両肩に手を置いてくる。


「それもいいね。でも、それじゃ、ハーちゃんが姉妹じゃなくなっちゃうな」


 ハーちゃんは、短めのサイドテールだ。


「ふふ、冗談ですよー」


 腕を、首に絡めてくる。


 ボクとバーシが、こうして気楽にスキンシップできるのも、女の子同士だからだよね。


 もし、ボクが男に生まれていたら、バーシとはどんな関係になっていたんだろう。


 今更、考えても仕方ないことだよね。予鈴が鳴り響き、三人が各自の机に帰ると、ボクも勉強道具を、机から取り出すのでした。

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