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第二十七話 九月二十日(火) ヤマト街、再び ―後編―

公開日時: 2022年8月20日(土) 21:01
文字数:2,037

「着いたよ~!」


 以前、ネコザキ先生に案内されたお店に着きました!


「へえ。こりゃ、ラドネスブルグのお菓子とはぜんぜん違うね」


 色とりどりなお菓子に、感心するお父さん。


「面白いな。アユム、おすすめとかあるかい?」


「んー……。ボクもおすすめを選べるほど、食べ比べたわけじゃないからなあ。前世でも、食事制限で食べられなかったし」


 おじいちゃんにそう答えると、「ふむ」と考え込んでしまった。


「あの、こういうのはやっぱりお店の人に訊くのが、いいんじゃないでしょうか?」


 お。バーシ、ナイスアシスト!


「正論だね。店主さん、おすすめは何かな?」


「そりゃもう全部! ……なんて言ったら困らせちゃいますね。栗まんじゅうと栗羊羹が、この季節美味しいですよ」


「じゃあ、それもらおうか」


 というわけで、おじいちゃん決定。


 皆も、同じのにしたようです。ボクだけは前回、栗羊羹食べてるから、栗まんじゅうプラス、ククとシャロンが愉しんでた水まんじゅうをいただこう。


「いただきます」


 合唱し、木製ミニナイフ……本名があるんだろうけど、それを水まんじゅうに通す。


 プルプルしてて、おもしろーい。口の中に、ペタって付く感じが、また面白い。お味も良し! 今度、ククとシャロンに感想言おっと。


 ここで一服。


「へえ、ヤマトじゃこういうお茶飲むのか。面白いねェ」


 おじいちゃん、しきりに感心。


「この、黒いのなんだろうね。アユム、わかるかい?」


「あんこっていってね、小豆っていう豆を甘く煮て、ペーストにしたものだよ」


 「ほー」と、お父さん感心。こっちラドネスブルグじゃ、小豆なんて食べないもんね。


「ハーちゃん、和菓子美味しい?」


「うん!」


 お日様笑顔。やっぱり、ハーちゃんにはこういう表情が似合う。


 続いて、栗まんじゅう。おお、ホロホロしていて。同じ栗なのに、栗羊羹とは、ぜんぜん違う食感だ!


「チョコレートもいいけど、ヤマト菓子もいいもんだねー」


 バーシが、ほっこりした表情で感服。ラドネスブルグは、チョコレート菓子で有名だったりする。


「ごちそうさま。お土産、買っていこう。店主さん、家族六人用と三人用に、お任せで包んでくれるかな?」


「ありがとうございます」


「え? 三人って、ひょっとしてうちのぶんですか!? そんな、悪いです!」


 慌てて遠慮するバーシに、「いいから、いいから」と、包みを渡すお父さん。


 我が父ながら、快活だねー。


「あと、この緑茶ってのはどこで買えるかな?」


「お茶屋さんでしたら……」


 店主さんから、説明を受けるおじいちゃん。


 一同、お皿と茶碗を下げ、お茶屋さんへ。


「おう、香ばしいねェ」


「ほうじ茶っていうんだよ。緑茶を焙じたものなんだ」


「ヘェ。両方買ってくか」


 というわけで、お買い上げ。


「次は、どこ行ってみようか」


 地図を広げるお父さん。


「ごめん、少し疲れちゃった」


 ハーちゃん、ちょっと辛そう。十歳だもんね。


「ああ、気づかなくてごめんね。まあ、ヤマト街は逃げないし、駐車場への帰り道で、なんか適当に買っていこう」


 というわけで、タコを二匹とわさびを、買って帰りました。



 ◆ ◆ ◆



 ヤマト菓子は、お母さんたちにも好評で、晩は、ついにタコの出番。


「ええ……ヤマトでは、こんなの食べるんですか?」


 ちょっと薄気味悪そうに、タコを見るお母さん。


「お母さん、異国の食文化を悪く言うもんじゃないよ」


 お父さんがたしなめる。


「そうですね。失礼しました」


「さて。教わった通りに捌いてみるか……」


 お父さんの手で、タコぶつが出来上がっていく。


「これを、生で食べるんだそうだ」


「生!? 寄生虫とか大丈夫なんですか?」


「お母さんは、心配性だなあ。ヤマトの人たちが平気なんだし、平気だろう。さ、できたよ。あとは、このわさびってのを、すりおろすのか」


 今回は、日曜じゃないけどお米デー。


「いただきます」


 というわけで、本日の晩ごはんはタコ刺し!


「このわさびってのは、どのぐらいつけりゃいいんだろうね?」


「前世の家族は、このぐらいつけてたよ」


 ほんのひとすくい、醤油皿に落とす。


 前世のボク自身は、塩分制限で刺身を食べたことがない。


「へえ。どれどれ……うお! こりゃ痛烈!」


 鼻をつまむお父さん。


「からっ!」


 ハーちゃんと合唱してしまう。


「なんでえ、アルク、だらしねェな」


 とか言いつつ、おじいちゃんもちょっと涙目だ。


 おばあちゃんとお母さんも、悶絶してる。


「アユムの言った量は、初心者向けじゃないね。もったいないけど、お醤油を入れ替えよう」


 新しい醤油皿に、ちょびっとだけわさびを落とす大人組。ボクとハーちゃんは、わさび抜き。


 ふう。改めて、よく味わおう。


 おお……コリコリと弾力があって……! おいしい! タコって、こんなにおいしいんだ!


 わさびが適量になったら、みんなフォークが進む進む。


「おいしかったー!」


 タコを満喫!


「だな! 今度また、なにか向こう・・・」らしいのを仕入れてこよう」


 お父さんも大満足。


 ちょっと、ハプニングがあった夕食だけど、みんな笑顔でごちそうさま!


 嬉しいな、念願の刺身が食べられるなんて。今夜は、より気分良く眠れそう!

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