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第十話 九月七日(水) 部活どうする?

公開日時: 2022年8月3日(水) 21:01
更新日時: 2022年8月4日(木) 14:46
文字数:1,828

「アユムは、部活決めた?」


 学校の休み時間、バーシが不意に話を振ってきた。


「うーん、正直悩んでる」


 雨が降らなければ、毎日走り込みしてるぐらいだから、足の速さには自信がある。でも……。


「陸上にしようか悩むんだけどさ、そしたら、バーシやククたちと過ごせる時間が減っちゃうなって。あと、家の手伝いがあるから、やっぱり陸上は無理かな」


 陸上選手への道を進む、なんてのもカッコイイけど、やっぱりボクは家業を継ぎたい。おじいちゃんの時代から、ずーっと続いてきたお店だもん。


「そっかー。私は服飾部なんか興味あるけど、確かにうちも、お店の手伝いがねー」


 二人で腕組みして悩む。放課後、あまり自由になる時間がない。それが、ボクらのネックだ。


「よ。ご両人! 何の話?」


「あ、クク、シャロン! 実はね……」


 部活絡みで悩んでいたことを、打ち明ける。


「二人が陸上と服飾にコダワリがないなら、ミョーアンがあるっすよ」


 びっと人差し指を立てるシャロン。


「自分たちで、部活作っちゃうんすよ」


 その発想はなかったとばかりに、「おお~」と声を上げる一同。


「確か、ここ、四人から作れたよな?」


「っす。だから、あとは内容決めて、顧問のセンセーをゲットすれば、おっけーっす」


 なるほど。


「そういやさ、二人の店も定休日ってあんだろ? いつ?」


「うちも、バーシんところも、毎週火曜。家族ぐるみでお付き合いがあるから、定休日を合わせてるんだ」


 火曜、とかナチュラルに脳内翻訳しちゃったけど、もちろん、この国の言葉での曜日名が、別にあります。


 ちなみに、小学生のときは、さすがにお店の手伝いがなかったので、陸上やってました。得意種目は、長距離走。


「そっか。じゃー、やるならそこかな? うちらも、特に何もない日だし」


 ククの言葉に、こくこくうなずくシャロン。


「問題は何をやるかだね! やっぱ、オカルト部とかどう!?」


 生き生きと、提案するバーシ。


「冗談でもやめてくれ。もっと、穏便なので頼む。第一、そんな変な部、申請通らねーだろ」


 二の腕を抱いて身をすくめるククに、不満そうな我が幼馴染みの顔が、好対照。


「じゃあ、ボランティア部とかどうかな?」


 代わりに、ポンと出てきたアイデアを口にする。


「いかにも、教師受け良さそーだな。やっぱ、ゴミ拾いとかか?」


「それだけが、ボランティアじゃないよ。お年寄りの話し相手になってあげたり、逆に子供の遊び相手になってあげたり」


「へー。子供と遊ぶのはいいな!」


「じゃー、決め打ちっすかね。あとは、誰か顧問のセンセーを探すだけっすね」


「とりあえず、昼休みに、担任のネコザキ先生に話してみよーぜ」


 話もだいたいまとまったところで、ちょうど予鈴が鳴ったので、各自席に戻る。


 部活、楽しみだなー。



 ◆ ◆ ◆



 給食が終わり、ネコザキ先生が職員室に戻ったので、給食を片付けた後、ボクらも職員室へ向かう。


「失礼しまーす」


 先陣を切って、扉を開ける。


 先生は、ショートカットで、シルバータビーの髪色としっぽをしていて、ちょっと目立つ。それに何より、大体白衣を着ていることが多い。……あ、いたいた。


「ネコザキ先生、部活のことで相談があるんですけど」


「あら。なんでもどうぞ。こっち、いらっしゃい」


 ネコザキ先生に招かれたので、近くに寄る。彼女は、珍しい緑色のお茶を、小さなカップに入れていた。前世でいう、緑茶と茶碗だ。


 先生、ネコザキなんていう珍しい名字だけど、お父さんが、東の国・ヤマト出身らしくて、こんなエキゾチックな名字らしい。ちなみにフルネームは、アメリ・ネコザキ。


 ともかくも、ボランティア部の設立を申請する。


「ボランティアとは、いい心がけね。最終的には、校長先生のご判断になるけど、ダメ出しされることはないんじゃないかな。で、活動日が、火曜のみ?」


「はい。ボクとバーシが自由にできるのが、その日だけなんで」


 ふむ、と考え込む先生。


「わかりました。あくまで部活ですからね。運動部のようにノルマ至上主義でもなし、いいでしょう」


「それで先生、顧問のことなんですけど……」


「私で良ければ、やりますよ。ちょうど、何も受け持ってなかったですし」


 「おおー!」と、幸先の良さに、四人でハイタッチする。


「まあ、とりあえず承認待ちね。先生のほうから、書式を整えて提出しておきますから」


「ありがとうございます!」


 一同お礼して、退出する。


 そういえば、ヤマト……前世の日本を連想させる名前だな。もしかすると先生、お豆腐や和食について詳しかったりするかも? 今度訊いてみよ!

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