新しい学校ではなぜかバスケを好きな人が多く、サークルといったものでは無いが自然にバスケ好きが昼に体育館に集まり、毎日ひたすら対戦をしていた。
その日もバスケが終わり、授業へ戻ろうとしている時に深沢が話しかけてきた。
「なあ川村、何かあったんか?」
「ん? なんで?」
「なんかさあ、いつもと違うんだよな。なんちゅうか、いつもはあーだりいとかつかれたーとか言ってバスケも途中で離脱すんじゃん?」
たしかに、いつもは十分もやったら疲れて帰るか、帰らなくてもコートの外で休んでいるのに、ずっと走り回ってるのに全然平気だ。なぜなのだろうか。
「あとさ、なんかやけにヘラヘラしてて気持ち悪いんだよなあ」
ヘラヘラ……なるほど。どういう事か理解ができた。どうやら僕は自分が思っている以上にご機嫌らしい。
「ああ、そういう事か、そしたらたぶんそれはバイトのせいじゃねえかなあ」
「バイト?」
「この前拉致られて行った飲み会で話しかけてきた子いたじゃん。あの子とバイト帰り一緒になってちょっと仲良くなったんだわ」
「マジか! 付き合い始めたん?」
「いやいや、ちょっと仲良くなっただけだって」
「マジかよ……バイト恐るべしだわ……」
言葉では謙遜するのだが、どうしてもしたり顔になってしまう。
「そういや深沢、バイトはできるようになったんか?」
「ああ、いちおうなったよ。でも、川村んとこはちょっとやめとこうかと思ってる」
「ええ! なんだよ! 一緒にやるんじゃなかったのかよ。おれ先に行った意味ねえじゃん」
「まあ、そこはいい子見つけたんだから結果オーライだべ」
「うーん、まあ、それはたしかに……」
「おれまだ経験無いからちょっとあの雰囲気は厳しいかなって思ってさ」
「ああ……あの時そんな感じの事言ってたもんなあ」
「まあでも、おれも横浜で探そうとは思ってるよ」
「それはいいね。同じとこらへんなら飯食ったり遊んだりもできるしな」
エロビデオ屋での敗北をきっかけに始めた深沢とバイトを一緒にやる作戦は残念ながら終了となった。
まあ、深沢は同じ学校に進学したからいつでも会えるし、逆に今来られても僕はあの子を追いかけるのに忙しくて構ってられないから結果オーライだろう。
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