エロビデオとバイトとストーカー

昔はストーカーって言葉がなかったから捕まらなかったんだよね……
まっしぐら
まっしぐら

青ヒゲ

公開日時: 2020年12月30日(水) 15:36
更新日時: 2021年1月16日(土) 12:53
文字数:1,470

 山越は毎日のようにバイト先に行っているらしくすぐ確認してくれた。


 「ああー、次の学校ってバスケできるんかねえ」

 「出来ても今以上に遠いからあんまできないかもなあ」


 などとだべっていると、


 「やあ! 聞いてきたよ。人手が足りないからすぐ来てほしいってさ」

 「おお! マジか!早速ありがとう!」

 「うーん…すぐか…」


 深沢が浮かない顔をしていた。

 「ん? どうした?」

 「いや、まだちょっとあそこ施設出れてないからさ、もうちょっと後がいいんだけど」

 「あ、そうなんだ。じゃあもうちょっとしたらって言っとこうか?」

 「いや、いいよ。せっかく聞いてもらったから先におれが行っとくよ」


 僕がけしかけて山越に聞いてもらったし、先に行って面接の様子やバイト先の雰囲気を知っておけば深沢の役にも立つかもしれない。


 「じゃあ山越、とりあえずおれだけ面接行くよ。いつ行けばいい?」

 「いつでも大丈夫だけど、今週は今日か金曜ならシフト入ってるから場所とか案内できるよ」

 「わかった。じゃあこのあと行こう!」



 数時間後、横浜。


 「横浜って…ヤベえ…」


 横浜駅は数回来た事があったが、その時の印象とは違い夜の横浜駅の混雑っぷりは想像を遥かに超えていた。


 「山越はこんなところで働いてるんだ…」

 「うん、結構忙しくて大変だけど、みんないい人たちだし、近くにゲーセンとかカラオケとかビリヤードとかあって楽しいよ」

 「へ、へぇー、そりゃ楽しそうだね…」


 なんだか急にサモハンキンポーがイカしたナイスガイに見えてきた。


 「店はここだよ。知ってる? おれは話したら着替えに行くけど、誰かくると思うから待ってて。」

 「え? もう着いたの? ってここってあのおいしいアレの店じゃん! レストランなんてあるんだ…」


 店は大勢の客と忙しく動き回るホールスタッフでごった返していた。

 雰囲気に気圧されていると、二十台後半から三十歳くらいの青ヒゲの男が出てきた。


 「こんにちは、はじめまして。ホールの取りまとめをやっております阿部と申します」

 「あ、はじまして。山越くんと同じ学校に通っています川村と申します」

 「では、こちらへ」


 店の中の予約席へ案内される。

 「じゃあまずは、山越くんから既に聞いているとは思うけど、お店の内容から説明しますね」

 「はい」

 (何も聞いてないけど…)


 「うちはご存知の通り横浜で有名な〇〇〇〇を主力商品にしている会社のレストランの一店舗です」

 「〇〇〇〇の方は店内で作っているわけではなく別に工場があって毎日作られていまして、うちのようなレストランとか、駅にあるあの黄色い服を着た販売員がいる弁当売り場に配られています」

 「あ、はい」


 「店を出てすぐそこにある階段を登って地上に出ると本社ビルがあって、そのビルの二階に更衣室がありますので働いてもらう時にはそこで制服に着替えてから店の方に来てもらいます」

 「勤務内容については、山越くんと一緒に厨房で調理補助をしてもらうって事でいいかな?」

 「え?あ、はい」


 「あとは、時給は最初○○○円だけど、頑張りに応じて上がります。それくらいかな。それで、川村くんはいつから働ける?」

 「え?えーと…いつでも大丈夫…です」

 「じゃあ、山越くんが次は金曜にシフトが入ってるからその日に彼と一緒にやってみてください」

 「あ、はい」

 「じゃあ、これからよろしくお願いしますね!」

 「あ、よろしくお願い…します」


 もう既に採用は決定されていて勤務の説明をされただけな感じだった…面接というのか?これは…

 何はともあれ、働く事になったようなので様子を見てみることにしよう。そんな事を思いつつ横浜の人の多さに目を白黒させながら帰っていった。


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