その後私は結局、メイナとジェイミと共に控室へと戻り会場内に用意された代表選手専用所から午後の競技を観戦していた。
午後の競技にはメイナとジェイミも出場するという事もあり、私は声を出して応援した。
だが結果的には3位となってしまい、その競技の1位は王都メルト魔法学院であった。
まぁ、出場したメンバーがメンバーだし、その結果は当然か。
そこに出場したのは、ニック、エメル寮長、マルロス副寮長、ウィル、マートルと知っているメンツであり知っている私からしたら弱点などないのではと思えるメンバーであった。
確かに男女混合競技だけど、あれは勝てる気がしないな……メイナとジェイミも負けない位の力はあると思うけど、総合力が違うなあれは。
その後も残りの競技が行われ、どの競技も白熱し接戦が繰り広げられ観客たちも大盛り上がりであった。
私自身も途中から競技に夢中になり、クレイス魔法学院を普通に応援していた。
だが、少し熱くなってしまい周囲からは少し驚いた視線を受けてしまう。
確かに以前はこんな感じじゃなかったよね……何かトウマたちと居たからそう言うのが自然と身についてしまったか?
と私は怪しまれない様に、令嬢らしくもう少しおしとやかに応援した。
そして、学院対抗戦1日目最後の競技が終了し、会場の中央に魔道具から今日の総合結果が表示された。
学院対抗戦1日目 総合順位
1位 シリウス魔法学院 340点
2位 王都メルト魔法学院 330点
3位 バーグべル魔法学院 280点
3位 クレイス魔法学院 280点
5位 ネアルガ魔法学院 270点
得点差がどの学院ともそこまで離れていない為、2日目の競技結果次第で順位は大きく変わる可能性がある為、観客たちは大盛り上がりであった。
「今年はシリウスが強いな、でもメルトとは10点差だし、マジで今年は僅差だな!」
「例年稀に見る大混戦じゃないか? どの競技も見応えが合って最高だったしな~」
「あぁ、こりゃ明日は見逃せないぞ!」
観客たちが盛り上がる一方で、各学院の代表選手たちはざわついていた。
「こんな事あるの?」
「そんな事聞かれても、そう言う結果が出てるんだし……」
「もしかして、うちの優勝もあるってことだよね?」
私の近くの生徒たちもそわそわしていた。
また、メイナとジェイミも結果に驚いていた。
「いや、これは明日出場のアリスにはプレッシャーだね」
「どの学院も明日出る人は、同じでしょ。勝ち負けで優勝出来るか出来ないか決まる様なもんだし」
正しくその通りだ。
これは絶対に今日マリアと入れ替わる必要がある……
私はそう思いつつも、今日の結果順位を見ているとアナウンスが流れる。
『これにて学院対抗戦1日目は終了となります。明日2日目は、バトル形式となります。詳細につきましては明日改めてこの場で説明させていただきます。それでは皆様、本日はありがとうございました。是非明日も御来場ください』
そうアナウンスが流れると、観客たちはぞろぞろと帰り始める。
私たちも会場を出る為に一度控室へと戻り、そこで今日のねぎらいと明日の話が行われた。
それにはそこまで時間がかからないと思っていたが、先輩たちの熱弁が入ったり明日出場する人への激励があったりで時間が少し長くなったが無事に終わり、その場で解散となった。
私はすぐさま荷物を持ち、一目散で控室をゆっくりと出て行きマリアとの待ち合わせ場所へと向かった。
とりあえずマリアと合流しなきゃ! たぶん会場の外の方で待っているはず!
少し急いで会場の外へと向かっていたが、途中の曲がり角で誰かの背中にぶつかってしまう。
私は軽く体勢を崩して、倒れそうになるが誰かが腕を掴んでくれて倒れずに済んだ。
「す、すいません……少し急いでいて」
直ぐに謝りつつ、私が当たってしまった人の顔を見ると、その人は初対面の相手ではなかった。
「ん? あんたどっかで……あっ! オービンの」
「あっ、確か貴方はリーベスト……さん」
そこに居たのは、シリウス魔法学院のリーベストであったが、もう1人その隣に同じ学院服を着た生徒がおり、その人が倒れそうになった私を支えてくれた人であった。
「リーベスト、知り合いなのか?」
「あ、あぁ。昨日ちょっと街をぶらついている時に、オービンと会ってな。その時に出くわした子なんだよ。オービンの友達で、名前は確か……」
あれ? そんな設定だったけ? ま、名前もあの時言っただけだしあんまり覚えてないのも当たり前かな?
私はリーベストの言葉を聞き、一瞬そんな事を考えてしまう。
「アリスです。まさかこんな所で会えるとは思いませんでしたよ、リーベストさん」
「そうそう、アリス! アリスだったな。悪い」
「いえ。意外と人の名前を覚えるのは大変ですし、私は気にしていないので大丈夫ですよ。それに、そちらの方にも助けていただきましたし」
私がリーベストの隣の方へと視線を送ると、その人物が自己紹介をし始めてくれた。
「これは、申し遅れてすいません。俺の名前は二コル・ノーザン。リーベストと同学年だ。よろしく」
「はい、よろしくお願いします。そして、倒れそうな所を支えてくれてありがとうございます、二コルさん」
二コルにお礼を言って、全力の笑顔で私は微笑みかけた。
すると、何故か二コルは少し頬を赤くしていた。
だが、私はそんな事には気付かずにリーベストと二コルに先を急ぐと告げて、その場から直ぐに立ち去った。
2人は私の後ろ姿を見ていると、やけにボーっとしている二コルにリーベストが肘でつつく。
「おい二コル。お前まさか、あの子の事が気になるのか?」
「ば、馬鹿! そ、そんな訳ないだろ!」
「ふ~ん、そんな動揺するお前今までに見た事ないし、まさか年下の女の子が好きだったとは意外だな~。お姉さんタイプが好きだったんじゃないのかな~」
「うるさいぞリーベスト! 気になってるなんて言ってないだろ!」
「いやいや、二コルさんや。顔に出てますよ~あんな笑顔向けられていちころですか~二コル?」
「だから違うと言ってるだろ! あ~もう! お前なんて知るか!」
そう言って、二コルはリーベストを置いて少し早歩きで進み出す。
「隠すなって~誰にも言わないからさ。本音を俺にだけ聞かせてくれよ~二コル」
「うるさい! 黙ってろリーベスト!」
リーベストはニヤニヤした顔で、先を行く二コルを追いかけるのだった。
私はリーベストたちと別れてから、今度は人とぶつからない様にと早歩きに変えて会場の外へと向かっていた。
いや~まさかリーベストさんに会うとはね。
少しビックリしたけど、怒られなくて良かった~それに二コルさんも優しそうな先輩って感じだったな~
私は先程あった2人の事を思い出していると、遠くの方で誰かが何か言い合っているのが聞こえて来た。
その方向は、会場外への向かう為には必ず通る所であったので避けずには通れない場所であり、少し厄介だなと私は思いつつ、その方向へと進んで行った。
そして、近くなった所で柱の陰に隠れつつ言い合いしている相手の方を覗き見ると、そこに居たのは見覚えのある2人であった。
「あら、こんな所で1人寂しく何をしているのかしら?」
「……」
「ちょっと! 無視ですの!?」
「……はぁ~何で貴方はいつも、私に突っかかって来るの? 私、別に貴方に何もしてないわよねマーガレット?」
「いいえ、してますわエリス! いえ、エリス・クリセント!」
そこに居たのは、エリスとマーガレットであった。
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