「コ、コスプレ?」
「あぁ! 皆で様々な格好をすれば注目も集められるだろ? それに、今までボツった案もコスプレとして格好とかで出来るしいい案じゃないか?」
トウマの提案に周囲がざわつきだす。
この時、コスプレと言う物自体がそんなに知られているものではなく、最近巷で何かになりきったり、姿をマネしたりする事が流行っておりそれをコスプレと呼んでいるらしい。
私自身もそこまで詳しくないが、よく街へと出て行くトウマたちは知っているので、そう言う風にこの場で説明してくれた。
コスプレね……確かに、人集めとしては流行っているものらしいし良さそうだけど、そうするとその服装はどうするのと言う問題が出る様な……
そう私は心の中で思っていると、アルジュが私の思っていた懸念点をトウマに訊き始めた。
「衣服か? あぁ、それなら俺につてがあるから、そこで貸してくれると思うから心配なしだぜ!」
「貸してくれるって、金は大丈夫なのか?」
「問題ないぜ! しっかりとその辺も確認済みだ。コスプレが流行ると見たある店長と知り合いでよ、服を沢山仕入れて貸出屋を始めたんだがよ、認知度がまだ低くて悩んでるらしいんだ。だからそこで俺たちよ! 俺たちが店の服を着て、店の宣伝をするで貸してもらうってわけよ」
「なるほど。トウマにしては、手際がいいもんだな」
「おいノルマ、何だその言い方は!」
「悪い悪い」
その後アルジュが再度クラスに対して、トウマの案の多数決をとった。
結果、賛成意見が上回ったので一時的に採用となった。
何故一時的かと言うと、やはり実際にそのお店の店主と話をして貸してもらえるのかや、金銭面の話を再度確認する為であった。
これは、アルジュや他の生徒も心配していた所であったので、明日トウマとアルジュとノルマが実際に話に行くことになった。
「とりあえず、方向性は決まったが他に意見がある者はいるか?」
そうアルジュが問いかけると、そこでピースが手を上げた。
「ごめんアルジュ、トウマの話を聞いている間に改めて思ったんだけど、フルーツを出すよりも調理した物を出したらどうかなって思うんだけど?」
「調理した物? て、言うと菓子の様な物か?」
アルジュの問い返しにピースは頷く。
ピース曰く、ただのフルーツをそのまま出すよりもデザート的な菓子にした方が人気も出ると語る。
また、コスプレ同様に街では女子向けのデザートが流行りだしており、既にピースもそれを食しており完璧な物ではなくて、近いデザートを出す方が良いと提案する。
更にピースは、フェルトの人脈を活かしデザート作りが出来る人を捕まえて、ニックの意外な一面である料理上手を活かして自作デザートを作る提案をする。
「おいピース! 勝手に俺を巻き込むな!」
「おいおいニック、いいじゃないか。俺は別にいいぜ。一応知り合いに、デザート作り出来る人がいるし紹介も出来るぜピース」
以外もフェルトは乗り気であったが、巻き込まれたニックは反対的であった。
そんな中私は、ニックが料理上手と言う所に驚いていた。
え、あのニックが料理上手とか意外過ぎて想像が出来ない……何が得意料理なんだ?
その後、アルジュが提案者のピースと話を詰めた結果、こちらも多数決を取り一時的な採用となった。
ピースの方も、明日フェルトの紹介でデザートを作れる人に会い、ニックが調理できるかや味を再現出来るかを確認し次第どうするかになった。
そうして、この日は学院祭で行う出し物は一時的な決定だけとなり終了し、解散となった。
そして私としては何もしないまま2日間が過ぎ、週始めの授業終わりに再度話し合いと言う名の結果報告が行われた。
結果から言えば、どちらの一時的な採用だったものは問題なく出来る事が分かったと、アルジュの方から報告された。
「先にトウマの方からだが、店から衣服は借りられる許可は貰った。金銭面では全くゼロにはならなかったが、かなり低予算で交渉成立した」
「いや~これも全部アルジュのお陰だぜ」
トウマはアルジュの交渉力の高さを話していたが、途中で恥ずかしくなったのかアルジュがその話を止めた。
「それで、ピースの方だがニックがデザート作りに成功し、味もピースのお墨付きでいいんだよな?」
「うん。ニックは完璧なデザートを作ったよ」
ニックはその時にそっぽを向いていた。
「一応レシピも作って、誰でも作れる様にしたから当日までに料理人を増やす予定だよ。ひとまず、ニックは確定だから」
「よし。と言う訳で、どちらの採用分も問題ないという事だから皆、このままコスプレとデザート喫茶の出し物で進めて行くでいいかな?」
アルジュの問いかけに、皆は特に反対意見はなくそのまま私たちのクラスの出し物が決定した。
この日で学院祭まで2週間となっており、この日からピースやニックの下で料理人育成が始まった。
料理人として選ばれたのは、ガウェンとヴァンとシンの3名であった。
そのまま料理班は、別室へと移動しに行く。
それ以外の皆は、アルジュ主体でコスプレの内容や内装について話を進め始めた。
「さてと、残ったメンバーで先に当日のコスプレ内容を決めておこうと思う」
すると、ノルマが事前に借りかれる衣装の一覧を借りて来た魔道具から黒板に映し出した。
そこには、執事やメイドから王女、国王風衣装や王国兵と言った衣服が特徴的な物から、童話などに出て来る魔女や幻獣のなりきり服と言った物までありとあらゆる衣装が揃っていた。
「各自やりたい物、やりたくない物があると思うがここは平等にくじ引きで決めていく」
「「え~」」
アルジュの提案に、数名がブーイングをしたがアルジュは意見を変えずにノルマに箱に借りかれる衣装の名前を書いて、箱へと入れ出す。
「やりたい物にしたら、やりたくないのが残るだろ。そうなったら、話が進まなくなるからくじ引きなんだよ」
まぁ確かに、私もやりたい物だったら安定の執事がいい。
絶対にメイドとか、王女とかそう言うのは皆から馬鹿にされそうだし絶対に夜だ! まだ幻獣なりきり服の方がましだわ。
そんな事を思っている内に、ノルマがくじ引きの準備が完了したので順次皆がその箱から一枚だけ紙を引いて行った。
そして全員が引き終わってから、一斉に全員で引いた紙を見て皆が一喜一憂し出す。
「うぎゃー! 俺が幻獣なりきりセットかよー!」
「残念だったなライラック、俺は砂漠の冒険者だ」
「くっそ、リーガの癖に……代われ! 俺と代われーリーガ!」
「嫌に決まってんだろが~」
ライラックがリーガを教室内で追いかけ始める。
他の者たちも、紙を開いたまままだため息をつく者もいたり笑っている者もいた。
そして私は紙を開いた状態で固まってしまっていた。
「お~いクリス。お前は何引いたんだ? ふふふ……俺はな、何と執事だぞ! 大当たりだ!」
「……」
「って、お~いクリス? 聞いてんのか? おい?」
トウマの問いかけに、私は全く耳を傾けずにただただくじで引いた紙を見つめていた。
その後、トウマが私がずっと見つめている紙を覗き込んで来て、私が固まっている理由に納得する。
「あ~……」
「……お、俺が……メイド……だと!?」
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