「それで、どうかなレオン……」
「あっ……あぁ」
未だにレオンは状況が理解出来ていないのか、少し戸惑っていた。
レオンは、私が急に告白して来た事に疑問を感じ、何か理由があるんじゃないのかと思いどうして告白して来たのかと問いかけて来た。
それに私は理由をそのまま話す訳には行かなかったので、家の名前は伏せつつ自分に迫って来る男を諦めさせる為デートをして欲しいと答えた。
「なるほど……やっぱり純粋な告白じゃなかったと言う訳だな」
「ご、ごめん……」
私は俯きながら謝るとレオンは小さくため息をついた。
「いいよ。友達からの頼みだ。断るわけないだろう。それに、俺を選んでくれた事が普通に嬉しいよ」
「ありがとうレオン! はぁ~良かった~」
私はレオンがお願いを引き受けてくれた事に感謝し、私は少し肩の荷が下りた感じがした。
「で、具体的にはどうするんだ?」
「あっ、そうだったね。まだその日は先なんだけど」
そのまま私はレオンにいつデートを実行する日かを伝えた。
マリアから聞いた話では、学院対抗戦が2週間後に控えており、その前日に実行する事になっているらしい。
なのでまだ猶予は2週間程あるので、それまでにいくつか打ち合わせやどこをデートとして回るかなどをいつ話し合うかを決め始めた。
そんな私たちを少し遠くの茂みから覗き見る人たちがいた。
「おい、あいつら何話してるんだ?」
「知るか。と言うか、何で俺を引っ張って来たんだよトウマ」
茂みに隠れる様にいたのは、トウマとルークであった。
「そりゃ連れて来るだろ、クリスがあのレオンとこんな人気がない所で密会してるんだからよ」
「それの何が問題なんだよ」
「おいおい、本気かよルーク。女の子が男子を呼び出してする話って言ったら、そりゃ告白しかねぇだろうが!」
「っ……」
トウマの言葉にルークは一瞬言葉を詰まらす。
そしてルークはレオンたちの方へと視線を向ける。
そんなルークをトウマはニヤニヤと見ていた。
「な、何だよトウマ……」
「いや~別に~。ただ、お前もなのかと思っただけ」
「?」
ルークはトウマの言葉に首を傾げたが、トウマは直ぐにレオンたちの方へと視線を戻していた。
「にしても、こっからじゃ何話してるか分からないな。近付くか? いや、さすがにバレるよな」
と、トウマがぶつぶつと呟いているとレオンたちが動き始める。
「あ、一緒にどっか行き出した。行くぞ、ルーク」
「いや、と言うかそもそも、何でこんな隠れてるんだよ。直接聞けばいいんじゃないのか?」
「アホかお前は!」
トウマからのまさかの罵倒の言葉に、ルークは少したじろいでしまう。
「そんな事して見ろ、それじゃ俺たちが覗き見していた事を正直に言っている様なもんだろうが!」
「そうだろ。俺は巻き込まれただけだが……」
「それをしたら、クリスにどう思われるか考えて見ろ。ドン引きだぞ、ドン引き! 最悪無視もあり得る」
「(自業自得なのでは)」
ルークは胸の中でそう思ったが、口には出さなかった。
それを言ったら、この話は永遠に続くんだろうと悟った為だった。
「と言う訳で、ここは何とかバレずにレオンとクリスの関係を暴く同盟をここに締結する」
「おい、勝手に俺を入れるな」
「お前だって、あの2人の関係が気になるだろ?」
「うっ……ま、まぁ、そうと言えばそうだが……」
少しルークの歯切れが悪いと思ったトウマが、それを訊ねるとルークは腕を組み視線を外した。
「その、あんまりレオンに関わりたくないと言うか、何か嫌われてるぽいから面倒事は避けたいと言うか……」
それを聞いたトウマは、ため息を漏らした。
「何だよ、そんな事かよ」
「そんな事って」
「嫌われているかどうかなんて、お前が今更気にする事かよ。少し前まで、俺たちの事だって軽く無視してた奴がよ」
「……」
その言葉にルークは何も言い返せずに黙ってしまう。
「でも、人からのどう言う印象を持たれているか分かるのは、良い事なんじゃないのか?」
「え?」
「だけど、今はそんなの関係なくやるけどね。ほら、いくよルーク! 見失っちゃうぞ」
と言ってトウマはレオンたちの後をゆっくりと追いかけだした。
「(はぁ~トウマの奴はたまに励ましてくれてるのか、適当な事を言ってるだけなのかよく分からないな。でもまぁ、少しは昔みたいな関係に戻れているって事かな? ……いや、今の方が昔より断然いい関係だな)」
「おいルーク、何してるんだよ! 早く行くぞ!」
「待てってトウマ。まだ話は終わってないぞ」
そして2人はレオンたちの後をなんだかんだ言いながら、後を追ったのであった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
その日私は結局レオンとは、軽く今後の話をしただけで解散とした。
詳しい内容などは、また日を改めて話す事に決めた。
ただ、1つだけレオンとの間で共通の問題認識があった。
それはデートについてであった。
レオン自身も今まで誰かとデートをした事がないと言う事であったので、このまま偽装デート当日を迎えるのはその相手にバレてしまうのではと言うものであった。
そこでどこかで一度デートの練習をすべきなのではと言う結論に至ったのだ。
私はその日の夕食を寮で食べながら、デートの練習について考えており、そのまま自室へと戻っても頭を悩ましていた。
う~ん……デート、デート、デートか……そもそも、何をしていればデートになるんだ?
既に私は考え過ぎて、根本的に何が何だか分からなくなり始めていた。
そこへ同室のシンが帰って来た。
あっ、少しシンにも聞いてみようかな。
「シン、ちょっと聞きたい事があるんだけどいい?」
「ん? いいけど、何かなクリス?」
「シンって、彼女いる?」
「ぶっ!」
何故かシンは私の問いかけを聞き、噴き出してしまい少しむせていた。
え? 何か、変な事聞いたかな?
私が心配そうにシンを見ていると、シンがむせ終わり「どうしてそんな事を?」と逆に聞き返して来た。
「いや、ふといるかな~と思って」
「べ、別に僕は彼女はいないよ……ちょっと前まで無口だったし、女子と話す機会もなかったしね」
「え~本当に~」
「本当だって! 何で疑うんだよ」
「だって、密かに女子の中で噂になってるってシンリが言ってたよ。話すようになって雰囲気が変わったから、ギャップがあるらしいよ」
「へ、へぇ~そ、そうなんだ~」
それを聞いたシンは、少し嬉しそうに返事をして来た。
この感じだと、シンは本当に彼女はいなさそうだね。
さすがにこれ以上聞いて、怪しまれるのは避けたいから、別の質問にするか。
「そう言えば、うちのクラスって誰か彼女いる人いたっけ?」
「え~と、確かアルジュがいるような、いないような疑惑があるってライラックとかリーガが噂してた気がするな」
あの2人が噂してるのか……意外とそう言う事には過敏な2人ぽそうだし、当たってるかもな。
こういう時は彼女持ちの人に、デートについて聞くのが手っ取り早そうだしアルジュに聞いてみるか、ちょうど明日は休みだし直接部屋に行ってみるか。
私は明日の予定を決め、その日はそのままシンと雑談した後就寝した。
次の日、朝食を取った後私はアルジュの205号室を訪ねに行った。
扉をノックし、暫く待つと扉が開いた。
「あ、アル……って、あれ?」
そこに居たのはアルジュではなく、同室のガウェンであった。
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