担当教員から言われた言葉に、教室内は一瞬時が止まった様に静かになる。
そしてそれを打ち破ったのはリーガとライラックであった。
「あーー! 嘘だーー! 嘘だと言ってくれ! まだそんな時期じゃないはずだ!」
「いや、もう11月中旬だからな」
「俺は信じない! そんな言葉、俺は信じないぞ!」
「信じなくてもいいが、試験日は変わらないからな」
「くそっ! いったい誰の仕業なんだ。つい昨日の様に第一期期末試験を思い出せると言うのに……」
「もう4カ月は経ってるぞ」
「そうか! これは夢だ」
「夢でも何でもいいが、現実逃避するのはもうやめろ。一応来週には、実力試験の方の内容は決まるからそれはその時に伝える。連絡事項は以上だ、解散」
そう言って担当教員は教室から出て行った。
そしてリーガとライラックは同時に机に突っ伏した。
クラスの皆はそれぞれに帰宅したり、その場で話していたりと各々の行動をとり始めた。
第二期期末試験か……もうそんな時期なんだ。
私は担当教員の話を聞いて、少し呆けていると再びシンリが振り返って来て話し掛けて来た。
「クリス、今の話はしっかりと聞いていたか?」
「聞いてたよ」
「本当か? まぁ、どっちにしろお前は問題なさそうだよな学科試験の方は」
「どうだろうな。今回は前回みたいにしっかりと復習とかが出来てない所もあるから、今の段階だと微妙だな」
第二期は第一期に比べて色々なイベントや事件などにも巻き込まれたり、他の事を考えていたりで勉強面が第一期に比べて完璧とは言えない状態である。
とは言っても、授業について行けないと言う事ではなく、しっかりと覚えて身についているかで考えた時である。
もう来月には試験なら、少しずつ復習や範囲の見直しをし始めないと厳しいな。
別に今の状態でも試験ではまあまあいい点は取れると思うが、前回は学科試験1位だったからそれから下がり過ぎると前回はまぐれだったと思われるが嫌だし、今回も1位を取る気持ちでやらないとな。
私はそう言う風に気持ちを改めて切り替えると、シンリが実力試験の話をし始めた。
「クリスは今回の実力試験は何だと思うよ?」
「う~ん、前回がゴーレム勝負だったから、今回も似たような感じで戦って競わせるんじゃないか?」
「確かにそれはあり得るな。でも、連続で似たような実力試験ってあんまりなかった気もするんだよね」
「そうなのか?」
私が軽く首を傾げていると、そこにマックスとケビンが通りかかる。
「何だ、もう試験の話をしてるのか? 少し気が早いんじゃないのか?」
「何言ってるんだマックス。試験は大切な事だろ。早いうちから対策を練っていれば、いい点が取れるんだから」
「そう言ってお前は、前回学科試験何位だったんだよ」
「うっ……13位」
ケビンは、かけている眼鏡を触りながらそう答えた。
「お前は気持ちとか凄いのに、どうしてか変な所でミスをするんだよな。前回だって、試験範囲を少し間違えてたし、回答欄間違えたりとかしてたしな」
「い、言うなよマックス!」
呆れた様にぼやくマックスにそれを他の人に聞かれたのが恥ずかしいのか、少し取り乱した感じでケビンがマックスの方を向いていた。
マックスはその後すぐに、ケビンに「悪かったよ」と謝っていた。
「で、試験の何の話をしてたんだ、クリスとシンリは?」
「次の実力試験の話をしてたんだよ。どんな内容になるかなってね」
シンリの話を聞いて、マックスとケビンも次の実力試験の予想をし始めた。
「確か去年は、何か競技的な感じだったな。いくつか項目があって、それぞれの力を測定する感じだったか?」
「あ~何か魔力腕比べ的な感じだったやつね。思い出した、思い出した」
「へ~去年はそんな感じだったんだ」
「あれは、その時の自分の短所と長所が分かりやすくていい試験だった記憶があるな」
「あっ、そうそうちなみに聞いた噂話だと、学年事でテーマ的なものがあるらしいんだよ。第1学年は自分を知るで、第2学年は成長するで、第3学年は磨くだったかな」
シンリが急に思い出したかの様に言った内容に、私たちは「へぇ~」と言いながら頷いた。
「でも、噂話だから本当かは知らないよ」
去年の試験内容はよく分からないけど、話を聞く感じだと自分を知る様な試験内容だった気がするな。
そうすると、シンリが行った第1学年の自分を知るって言うのには当てはまるし、第2学年の成長するって言う意味では実践的な場で力をどれだけ使えて、1年でどれだけ成長しかたを見る場だと考えると当てはまる気がするな。
かなり私の偏見でのこじつけだけど、そう考えると成長が出来ているか見る様な試験かもしれないな。
「ちなみに、去年の実力試験は他のはどんなのがあったんだ?」
私は興味本位でシンリたちに質問すると、シンリたちは思い返して答えてくれた。
先程言った内容が第一期の実力試験で、第二期の実力試験では地獄の夏合宿でやった様なチームで協力して課題をクリアする試験だと教えてくれた。
第三期の最後の実力試験は、第一期と第二期の試験を混ぜた様な物で、今年の第一期でやった個人戦的なものもやったと思い出しながら、答えてくれた。
「いや~懐かしいな。あの時はルークたちがスゲ~って思ったな」
「確かに、僕やマックスは転入組だからルークたちの凄さを初めて知ったんだよね」
そうか、マックスやケビンは高等部からのこの学院生だったの忘れてた。
私はマックスとケビンから昔の話を聞いて、2人と似たような事を私も少しは感じたなと懐かしく思った。
「少し話が脱線したな。でもまぁ、予想したにしてもどうせ来週には分かる事だし、予想ってのは大抵外れるって聞いた事もあるぞ」
「そうかもな。でも、ちょっと昔の話を聞けただけ面白かったよ。ありがとう」
私の言葉にマックスは軽く手を振って「そんな大した話じゃないよ」と答えた。
「あ~何か今試験の話をしたら、猛烈に勉強したくなって来た! マックス、僕は先に帰るぞ」
「えっ、あ、おいケビン、待てよ。じゃ、俺も行くから。話に急に入って悪かったな」
そう言って2人は、そのまま立ち去って行った。
するとシンリが立ち上がり荷物を持った。
「それじゃ僕たちも帰らない? それとも、クリスはどっか寄って行く所がある?」
シンリから一緒に帰る事を誘われたので、私は今日はそのまま部屋でゆっくりとしようと思っていたので「いや、特にないから帰ろう」と返事をした。
そして私も荷物を持って、シンリと一緒に教室を出た時だった。
私たちの目の前に突然、ピースが立ち塞がった。
「ビックリした! どうしたんだよピース?」
ピースは少し息を切らした状態で、直ぐにはシンリからの問いかけに答えずに息を整えていた。
私とシンリは顔を見合わせて軽く首を傾げていると、ピースが息を整え終わり用件を口にした。
「2人共ちょっと協力してくれない?」
「協力?」
「うん。とりあえず、用事とか何かあったりする?」
私とシンリは特に用事もないので、首を横に振って返事をすると突然ピースが私たちの片手をそれぞれ掴んで来た。
「それじゃ、ちょっとついて来て」
「えっ」
そう言った直後だった。
ピースが私たちの片手を掴んだままどこかへ向かって走り出したのだった。
私とシンリは引っ張れながら走るピースに何とか付いて行く事しか出来なかった。
途中でピースに問いかけても全く答えてくれず、ピースは一直線にただ走るだけであった。
えー、これ私たちどこに連れて行かれるの!?
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