リリエルはそう告げた後、再びマイナの前にあるスイーツへと手を伸ばすが、それはマイナに手を掴まれて止められる。
「リリエル先生、もう少し具体的に訊かせて下さい!」
「具体的にって、何を訊きたいのよマイナ」
「モーガンさんの特異体質についてもそうですが、モーガンさんの入学時に送られてきた手紙はリリエル先生が出した物なんですか?」
「手紙?」
モーガンは聞いた事のない内容に少し困惑していた。
さっきの何とかタイプの件もそうだけど、マイナ学院長はモーガンに関する何かを入学時に既にその手紙で知っていたって事?
私はそんな事を思いつつ、マイナとリリエルの方を見つめた。
「あ~あの手紙無事に付いていたのか。それは良かった」
「やっぱり、あれはリリエル先生からでしたか。字から何となくそうかと思っていましたが、何であんな重要な事を名前もなしで出すんですか? もし、私でない相手に渡っていたらと考えないんですか?」
「そこは心配してないよ。この学院の学院長以外の者が手紙を見たら、全て燃えてなくなる様にしてあったし」
「貴方って言う人は……」
すると、そこでモーガンが会話に入って行く。
「すいません、さっきから手紙って何のことですか? 話から僕に関する事の様ですけど」
「それはな、私がお前がこの学院に入学すると分かって学院長宛てに、お前の特異体質の事を伝えたんだ」
「なっ」
「だから、こいつはお前が特異体質である事を、既に入学時には知っていたんだよ」
「そ、そうなんですか、マイナ学院長?」
モーガンがマイナを方を見て、問いかけるとマイナは申し訳なさそうに頷いた。
「確かにリリエル先生からの手紙で、モーガンさんの力については知ってはいましたが、本人には言っていないなどとあったのでこちらから話す訳には行きませんでしたので黙っていました」
「それじゃ、マイナ学院長はリリエルさんからの手紙でモーガンの特異体質は、既に国に申請を出している事も知っていたんですか?」
私からの問いかけに、マイナは首を横に振った。
「知りませんでしたよ。ですから、先程言った事に驚いたんです。リリエル先生、いつそれを国に伝えていたんですか?」
「そうか。そう言えばあれは、手紙を出した後だったな。私がたまたまこの国近くに居た時に、ふらっと王城へ忍び込んで国王のハンスと直接会って話したんだよ。それで、ハンス直々にやってもらったんだ」
「はぁ~……リリエル先生、忍び込んだって見つかったら一大事になっていましたし、ハンスもよく応じましたね」
「流石に最初は驚いていたが、何故か納得した様な顔をしていたわね。まぁ、ともかくその時にモーガンの特異体質については届を出したのよ。一応、監視などの細かい所は私が責任者としてあるから、他の誰かがモーガンに関わる事はないわ」
「なるほど。納得しがたいですが、納得しました。確かにリリエル先生ならば、監視や力の保証などについては問題ないですね」
マイナは椅子の背もたれに寄りかかり、小さくため息をついた。
その隙にリリエルは、マイナが注文しまだ残っていたスイーツに手を伸ばしひとかけらを食べた。
「師匠、それじゃ僕の魔力を見る力は特異体質で間違いって事ですよね? なら、何で嘘を僕に言い続けて来たんですか?」
「そんなの決まっているだろ。特異体質持ちって言うのは、この世の中であまりよく見られないからだよ。そんなのあったとしても、知らない方がましだと私が判断したからだ。それに、お前の特異体質は珍しいタイプで気付かれる事もないと思ったから魔法だと言い通したんだよ」
「なるほど……でも、少しぐらい僕に言ってくれても良かったじゃないですか」
「それは悪かったと思っているわ。だから、念の為にハンスの奴に直接会って申請とやらもしておいたのよ。何があってもいいように」
「一方的に何かを決められるのって言うのは、あまり気持ちが良くないものですよリリエル先生」
「私もやってから後悔したから、こうやって色々と動いたのよ。モーガン、貴方の事を隠したままにして本当にごめんなさいね。と言う訳で、この話はおしまい。モーガン、マイナが頼んだスイーツ私にもお願い」
リリエルの言葉にモーガンは小さくため息をつくが、モーガンもそこまで引きずっている訳ではなく、何かスッキリした様な表情をしておりスイーツの注文を厨房へと伝えに行った。
「リリエル先生、弟子に対してさっきの話雑に終わらせ過ぎじゃないですか?」
「そう? モーガンもそこまで重く思い詰めていた感じじゃなかったし、大丈夫よ。彼ももう大人のだから。それで、貴方はまだ何か訊きたい事があるのかしらクリス?」
リリエルは私の心を見透かしている様な発言をして来たので、私はそのまま気になっていた事を問いかけた。
「は、はい。その先程の特異体質の件で、何とかタイプと言っていましたが、そんなの存在するんですか? 俺、聞いた事も本で見た事もないんですけど」
私からの問いかけにリリエルは一度、マイナの方を見るとマイナは軽く頷いた。
その反応を見てリリエルは私の方を再度見て、話し始めた。
「特異体質についての詳しい書物などは、一定の者しか見れないから知らないのも当然よ。詳しくは話す事は出来ないけど、タイプについては問題ない様だから特別に教えてあげるわ」
そう言ってリリエルは特異体質のタイプについて語り始めてくれた。
そもそも特異体質と言うには、それぞれタイプが存在しているらしい。
私としては、そのこと自体が初耳であった。
現状大きく3つのタイプに分かれているらしい。
1つ目は、常時発動タイプと呼ばれそのままの通り、常に特異体質の異常な力が発動している状態の事である。
その様な人は、自身で制御などは出来ない為抑制する魔道具が配布されているらしい。
この学院で言うと、第3学年のイルダ寮副寮長のマルロスだとリリエルが教えてくれると、急にマイナが立ち上がりリリエルに迫った。
どうやら、その事は秘密にされている事らしくマイナは偶然とは言え知ってしまったので、マルロス副寮長の件については秘密にしておいて欲しいと言われたので私はその約束を破らないと誓った。
リリエルはマイナに謝った後、2つ目のタイプについて話し始めた。
2つ目は、操作可能タイプで1つ目とは異なり自身で特異体質の力を制御できる人の事を言うらしい。
私は自分の中で、トウマがその類似タイプなのではないかと思い浮かべていた。
国からは操作可能タイプの人にも、制御用の魔道具を配布しているとマイナは補足的に教えてくれた。
そして最後の3つ目は、特定条件下タイプであり先程モーガンに伝えていたものだ。
3つ目のタイプの人はほとんどいないらしく、特定条件下タイプと言うのはとある条件下のみにおいて、自身が持つ特異体質の力を発動させられるものであるとリリエルは語った。
確かにモーガンはいつも他人の魔力を見るとは、同じ様な動作をして見ていたと私は思い出した。
リリエルは、それがモーガンの特異体質発動のトリガーになってると言い、それが特定条件でありそれをしなければモーガンの特異体質は発動しないと教えてくれた。
私が知らないだけで、特異体質にも色々な種類とかがあるのか。
私は相槌を打ちながら話を聞いていると、マイナがリリエルに話し掛けた。
「リリエル先生、それ以上は話し過ぎになるのでもう止めて下さい」
「そうね。少し話過ぎたわね。クリス、もし興味があるのなら研究者か地位ある者になる事を勧めるわ」
「検討しておきます」
するとそこに、リリエルが先程注文したスイーツをモーガンが運んで来た。
リリエルはそのスイーツに興味が映り、そのままスイーツの眺めつつ美味しそうに食べ始めた。
そこで、再びお客さんが増え始めたので私たちはマイナとリリエルに「ごゆっくり」と伝えて他のお客さんの所を周り始めた。
その後私たちのクラスの出し物は大反響となり、1日目の学院祭終了時間までお客さんが途切れる事はなかった。
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