夏休みも残す所、5日となったある日、私の元に一通の封筒が届いた。
その日、合同合宿以降暫く帰って来なかったトウマが帰って来たと同時に、私宛の封筒を寮の玄関で受け取ったらしく、直接私に渡してくれた。
封筒の中身には手紙が入っていると書かれ宛名には、クリスへと書かれており送り主は、お母様からだった。
まさかのお母様からの手紙に私は驚き、自室で変な声が出てしまう。
突然の声に驚くトウマだったが、私が直ぐにお母様からの手紙で驚いたと伝えると、そうかそれは良かったなと言って持って帰って来た荷物の整理を始めた。
どことなくトウマにいつも様な元気がなく見えたので、私は軽く大丈夫と聞いた。
するとトウマは、少し驚いた表情をして俺? と聞き返してきたので、私は率直に元気がなさそうだからと答えると、トウマは急にいつものテンションに戻りちょっと遠くまで行って疲れただけなんだ、と答え心配かけてすまんと言われた。
「そう。それならいいけど、ならゆっくり休めよ。合同合宿帰って来て1日休んだ後、直ぐに行ったんだから、体調なんて崩すなよ」
「分かってる、分かってる。心配ありがとう、クリス」
するとトウマは、荷物の整理に戻った。
私は、封筒の方に意識を戻し、何でいきなりお母様が手紙を送って来たのかの理由を考え始めた。
この時、もし何かしらの緊急事態であれば手紙などで連絡してこないと思い、至急帰って来るような事であっても、手紙でそれを知らせる様な人じゃないと分かっていたので、余計に何の手紙か分からずになっており、少し読むのが怖くなっていた。
お母様は、何をこの手紙に書いて送って来たの? 分からない、分からな過ぎて開けるのが怖いな……。
私が封筒の開封をするかどうか、どぎまぎしているとトウマが少し外出してくると言い残し、部屋を出て行った。
私は軽く返事をした後、トウマが部屋を出て行った事をいい機会に、机にしまってあるナイフを取り出し、手紙の封にナイフを当てた。
「よし、開けるぞ」
ナイフをゆっくりと封している箇所に滑らして、封筒の封を開ける。
私は一度、深呼吸してから封筒から折りたたまれた一通の手紙を取り出し、折りたたまれた手紙を開いた。
そこに書かれていたのは、たった一文だけであり口にだして読み上げた。
「ごめん、彼がそっちに行った……? 彼とは?」
私は手紙の内容が一文だけだったことにも驚いたが、それよりも内容が分からず首を傾げた。
「え? 誰、彼って? ん? どう言う事なの、お母様?」
考えれば、考えるだけ頭の上にはてなマークが浮かび上がり、余計に分からなくなっていた。
とりあえず他に送られて来ている物はなかと、封筒の中身を見直したが何も入ってはいなかった。
その後、椅子に座り考え続けたが、全くお母様が書かれた彼に見当がつかない為、一度場所でも変えて気分転換でもしようと部屋を出た。
「彼? …彼? …彼? とは、一体誰?」
そんな独り言を言いながら廊下を歩いていると、アルジュとすれ違う。
「何をぶつぶつと言ってるんだ、クリス」
「え、あぁ。何と言うか、理解不能な手紙が両親から来て考えてたんだ?」
「理解不能な手紙なんて来るのかい? まぁ、そこらへんは僕には分からないけど、意外とそう言うのって本当に意味がなかったりしたりすんじゃないのかい? 良かったら、寮の外にあるベンチで空を見ながら考えたらどうだい」
「ベンチなんかあったけ?」
「あったよ。少しだけ寮から離れてるけど、目の前の道にいくつか置かれてるよ」
「そうだったけ? それじゃ、それを見に行くがてら、そこで考えてみようかな。ありがとう、委員長」
「はいはい。あんまり、変に思い詰めるなよ」
そう言ってアルジュは立ち去って行った。
私はアルジュに言われたベンチを目指し、寮の外を出る為に食堂兼リビングを通る。
するとそこで、マックスとケビンに声を掛けられた。
「よっ、クリス。どっか行くのか?」
「いや、外出じゃなくて寮の近くにあるっていうベンチに行ってみようかなって」
「あ~あそこか。でも何で急にあそこなんかに行くんだ?」
「ちょっと考え事をしたくて、委員長に言ったらそこをおすすめされてさ」
「なるほど、アルジュに言われたのか。そう言えば、お前もこの前あそこで黄昏てたよな、ケビン」
「な、な、な、何を言ってるのか分からないな、マックス……」
ケビンはマックスの発言に動揺して、片手で眼鏡を何度も触っていた。
「何してたんだよ、あんとき」
「別に、何もしてない……」
「本当か~」
「本当だ!」
「居た事は認めたな。まぁ、ケビンも行って何かするくらいだ、考え事をするにはいい場所なのかもな」
「お、おい! 僕は何も言ってないだろ!」
マックスは慌てるケビンに、はいはいと適当に流すように答えると、私に足を止めてすまんと言ってもう行っていいぞと言ってくれた。
私は何かケビンに申し訳ない事をしたのかなと思いつつ、その場を後にして寮の玄関へと向かった。
するとまた玄関で寮の人にバッタリ会った。
「あれ、クリス? どっか行くの?」
そこで会ったのは、ピースとニックだった。
「ピース、こいつがどこに行こうがいいことで、俺たちには関係ないだろ。それより、早くお前の荷物を降ろしたいんだが」
「あ~ごめんごめん」
ピースとニックは、沢山の袋を持っており、そこにはお菓子や食べ物が袋一杯に入っていたのが見えた。
私はピースの物なんだろうなと思いつつ、何でニックがそれを持っているのか気になっり、軽く聞いてみた。
「え? 何でニックが、そんな袋一杯に持ってるかって? それはね、街で買い過ぎで困ってる所にニックを見かけて声を掛けたら、渋々持ってくれたんだよ。でも、フェルトも居たんだけど、途中からいなくなったんだよね」
「フェルトの奴、俺に全部押し付けやがって、帰ってきたらただじゃおかねぇぞ。おい、俺は先に部屋に戻るぞ、こんな物いつまでも持ってられるか」
そう言って、ニックは沢山の袋を持って自室へと向かった。
「と言うわけだから、僕も行くね。あっ、もし街で何か美味しい物食べたくて困ってたら僕に聞いてね。絶対に後悔させない店を教えるから」
「おい、ピース早く来い!」
「はいはい、今行くよ。じゃ、またねクリス」
「う、うん」
そう言ってピースとニックは自室へと戻って行った。
ニックが言っていたフェルトが誰かに何かを押し付けるシーンが、簡単に頭の中でイメージでき、そんな性格してそうだもんなと勝手に決めつけていた。
私はそのまま寮の外に出ようとすると、突然後ろからモーガンに声を掛けらてビックリする。
「何か良くない事が起こりそうな魔力を感じます。気負つけて下さいね、クリス」
「もう! ビックリするな! 急に魔力を見ないでって言っただろ、モーガン」
「すいません。つい、良くない事が起こる魔力を感じたので見てしまいました。本当にすいません」
「まぁ、反省してるならいいけど、良くない事が起こるってどう言うこと?」
「正確には分かりませんが、近直クリスに不運が降りかかるとしか言えませんね。気をつけて下さいね。では、これで」
「え、あ、うん」
モーガンはふらっと急に現れてと思ったら、ふらっとまた立ち去って行った。
その時私は、学院七不思議をやった時の事を思い出し少し震えがった。
私は気持ちを切り替えて寮から出て、道まで歩き左右を見ながらベンチがあるかを探すと、遠くの方に本当にベンチがあったのでそこまで歩き、ベンチへと座った。
ベンチに座るといい感じに木の日陰で、木漏れ日が当たりとても気持ちいい場所であると分かった。
「あ~こんないい場所があったなんて、知らなかったな~そよ風が当たるのもいい。ここで昼寝したら、気持ちいだろうな~」
私はその場の気持ちよさに考え事など忘れて、瞳を閉じていた。
そのまま段々とうとうとして来て、眠りにつきそうになっていた時だった。
「見つけた。おい、アリス起きろ。こんな所で寝たら、体に良くないぞ」
「っ!?」
その言葉に、私の眠気は一気に覚め、目を見開く。
そして目の前にいた人物に私は、開いた口が塞がなかった。
「何て顔してるんだアリス。それに、あんなに綺麗だった髪も黒くしちゃって勿体ない」
「な、な、な、何でここにいるの……お兄ちゃん」
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